東京不動産(一戸建て、土地)|1977年創業の信頼と実績

住宅の買い時2022

住宅の買い時を見極めるための金利動向や税制などのまとめサイト

[記事公開日]: 2013/07/15 [最終更新日]:2023/02/03

住宅取得等資金贈与の特例 ― 非課税特例の変更点など徹底解説 ―

期間

2023(令和5)年12月31日までの贈与

住宅等取得等資金贈与の特例とは、子や孫が住宅を購入するために父母または祖父母が援助した資金に対して、一定の金額までは贈与税を課税しないという制度です。なお、既に支払い開始している住宅ローンの返済に対する援助は、この制度の対象ではありません。

なお、贈与税は1年単位で課税される暦年課税で、基礎控除110万円が設定されており、一年の贈与額が110万円以内ならば課税されません。しかし、住宅購入資金のような場合は、贈与額が控除額の110万円を超える可能性があります。このようなケースにおいて、住宅取得等資金贈与の特例を利用すれば最大1,000万円までが非課税となり、さらに110万円の基礎控除額を併せて最大1,110万円までの贈与が非課税になります。

特例の概要および改正点

この特例の非課税枠は、これまで住宅用家屋の取得等に係る契約の締結時期で段階的に限度額が設定されていました(表1参照)。

しかし、令和4年度の改正にて、契約時期は問わず、住宅取得等資金の贈与を受けて新築等をした次に掲げる住宅用家屋の区分に応じて定められる金額になりました。

非課税限度額
  • 耐震、省エネまたはバリアフリーの住宅用家屋: 1,000万円
  • 上記以外の住宅用家屋: 500万円

この非課税枠は贈与される側に対するものであり、祖父や父など複数の人から贈与を受ける場合の合計額です。

また、相続開始前3年以内に行われた贈与は相続財産とみなされ相続税の課税対象になりますが、この特例を利用した場合の非課税分の贈与においては、相続財産には含まれず相続税の課税対象になりません。

【 追記 】政府与党は令和5年度税制改正にて、この相続税対象期間を「3年」から「7年」へと広げる方針を出しました。

令和4年度の改正点は次のとおりです。

①贈与期限 2年延長 → 2023(令和5)年12月31日まで
②非課税限度額 1,500万円 → 1,000万円(省エネ、耐震性、バリアフリー性能に優れた住宅)
1,000万円 →  500万円(上記以外の一般住宅)
③適用対象住宅 築年数要件を廃止
新耐震基準に適合(昭和57年1月1日以降に建築された住宅は新耐震基準に適合とみなす)
④受贈者の年齢要件 20歳以上 → 18歳以上

※上記(②を除く)の改正は、住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例措置についても同様とする

※上記改正は、令和4年1月1日(上記④の改正は令和4年4月1日)以降の贈与から適用

【参考】過去の贈与税非課税枠の限度額(表1)

契約日 消費税10%適用時 左記以外(※1)
質の高い住宅
(※2)
一般住宅
(左記以外)
質の高い住宅
(※2)
一般住宅
(左記以外)
2019年4月1日
~2020年3月31日
3,000万円 2,500万円 1200万円 700万円
2020年4月1日
~2021年12月31日
1,500万円 1,000万円 1,000万円 500万円

(※1)消費税率8%で住宅を取得した場合、または個人間売買等で消費税が非課税だった場合
(※2)省エネ性能、耐震性能またはバリアフリー性能において一定の基準を満たす住宅

主な適用条件等

  住宅取得等資金贈与の特例
贈与者(意思表明可能な人) 直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母など)
受贈者 その年の1月1日現在※18歳以上の直系卑属 ※令和4年3月31日以前は20歳以上
その年の合計所得2,000万円以下の者に限る(新築等をする住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)
原則、贈与の時に日本国内に住所を有する者
取得する住宅 新築または取得した家屋の登記簿上の床面積は40㎡以上240㎡以下
中古住宅の場合、新耐震基準に適合する住宅(
築年数要件廃止
※登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降なら新耐震基準に適合とみなす
増改築の場合、工事費用が100万円以上
控除額(非課税枠)
  1. 1,000万円
    省エネ、耐震またはバリアフ リー性能において一定の基準を満たす住宅用家屋
  2. 500万円
    上記以外の住宅用家屋
選択手続 贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告(入居済であること)
※基礎控除110万円以下なら申告不要
税率 非課税枠を超えた部分の課税税率

【暦年課税制度】の場合
 超過累進税率 10%~55%(8段階)

【相続時精算課税制度】を利用した場合
 一律20%
相続発生時の相続財産への加算 非課税の特例のため、相続財産への加算なし
特別控除の複数適用 なし
適用期限 2023(令和5)年12月31日までの贈与

申告方法

納税地の所轄税務署に申告する【e-Tax(電子申告)、郵便または信書便で送付、持参】。

暦年課税の場合、贈与税の基礎控除額110万円以下なら申告は不要です。

なお、住宅等取得資金贈与の特例の非課税額の範囲内でも、110万円を超える時は申告が必要です。


住宅取得等資金贈与の特例について詳しくはこちら

 ⇒【国税庁】直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税

暦年課税と相続時精算課税の比較

贈与税の課税方法には「暦年課税」と、他に「相続時精算課税」の2つの方法があります。生前贈与する場合に一般的なのは暦年贈与で、年間110万円の基礎控除額を超える分に税率を乗じて課税されます。この暦年課税の税率は10~55%で贈与額が大きくなると税率も上がります。

一方、相続時精算課税には贈与回数に関係なく2,500万円の非課税枠が設定されており、一度で多くの贈与をしたい場合に有効です。贈与金額が2,500万円を超えた場合は、超過分一律20%で贈与税が課税され、この時支払った贈与税分は相続税の計算時に差し引かれます。

ただ、この2,500万円は贈与税が非課税になるだけで、将来の相続発生時に相続財産に加算されて相続税が計算されます。あくまでも課税の先送りなのですが、これは上の世代から若い世代への財産の早期移転を促すものであり、資産が少ない若い世代の住宅ローンの負担軽減や投資を早期に始められるなど、経済的なメリットを期待できます。もし、遺産が不動産の場合は、相続の際に贈与時の時価で遺産に加えられるため、贈与後に不動産の価値が上がっても、その分の相続税の節税にもなります。

なお、2,500万円の非課税枠は贈与者一人当たりの額であり、両親からそれぞれ贈与を受ける場合は合計5000万円が非課税となります。さらに、父親、母親がそれぞれ別の課税方法を選択することも可能です。例えば、父親からは暦年課税でもらい、母親からは相続時精算課税でもらうというやり方も可能です。

  暦年課税 相続時精算課税制度
一般枠 住宅取得等資金
贈与者(意思表明可能な人) 親族ほか、第三者からの贈与を含む その年1月1日現在60歳以上の父母または祖父母
父母、祖父母等の直系尊属 ※年齢制限なし
受贈者 年齢制限なし その年1月1日現在※18歳以上の直系卑属である推定相続人(通常は子または孫、世襲相続人を含む。養子でも可)
※令和4年3月31日までは20歳以上
控除額(非課税枠) 基礎控除(毎年)
年間 110万円

※贈与者が複数の場合その合計
特別控除
累積 2,500万円

※贈与者ごとに本制度の選択が可能
選択手続 贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告

※基礎控除以下なら申告不要
贈与を受けた年の翌年3月15日までに申告
税率 超過累進税率
10%~50%(6段階)
一律20%
制度選択後の贈与の累積額が特別控除額を超過した場合に課税される
相続発生時の相続財産への加算 相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産に加算。
相続税を計算し、既に支払った3年以内の贈与税があれば差し引く

(注意)
令和5年度税制改正より、2024年1月1日以降の贈与の相続税課税対象期間は3年から7年へと広がります。
制度適用後の贈与財産をすべて相続財産に加算して相続税を計算、既に支払った贈与税があれば差し引く(または還付)
特別控除の複数適用 なし 父母(養父母)から、それぞれ可能
適用期限 なし なし 2023年12月31日までの贈与

 

相続時精算課税制度の注意点

相続時精算課税制度を一度利用すると暦年課税を選択することはできなくなり、贈与税の基礎控除が使えなくなります。その為、贈与が110万円以下の場合でも届け出が必要になります。また、相続時精算課税制度を利用するためには事前に税務署への届け出が必要ですが、一度届け出るとその後の取り消しはできません。

【補足】
令和5年度税制改正大綱より、相続時精算課税制度を選択しても110万円の基礎控除が適用されるようになり、毎年110万円以内の贈与については相続時の申告が不要になります。また、相続開始前7年において暦年課税の場合、生前贈与は相続財産に加算されますが、相続時精算課税の場合は相続財産に加算されないということなので、相続時精算課税を選択した方がお得なケースが増えると予想されます。

相続時精算課税制度の改正

2024年1月以降の贈与より、相続時精算課税でも年110万円の基礎控除が設けられ、110万円以下の贈与ならば申告が不要になります。さらに、基礎控除分の贈与財産は被相続人が亡くなっても相続財産に加算されないため、相続税の節税効果が上がります。

一方、暦年課税制度にも改正があり、現在の相続前3年間に受け取った贈与財産は相続財産に加算するという仕組みにおける相続前期間が、3年から7年に拡大されます。拡大される4~7年前の贈与財産の合計からは100万円が差し引くともしていますが、実質増税といえます。

今回の改正により、年110万円の基礎控除が設けられ、さらに相続時にその基礎控除分が加算されない「相続時精算課税制度」を選ぶメリットが大きくなると考えれます。

相続時精算課税制度との併用ができる

「住宅取得等資金贈与の特例」は、「相続時精算課税制度」と併用ができます。この場合、非課税枠が最大で3,500万円(省エネ性能、耐震性能またはバリアフリー性能において一定の基準を満たす住宅の場合。それ以外の一般住宅は3,000万円)となります。

その内、相続時精算課税の2,500万円分の贈与財産は相続時に相続税の課税対象となり、2,500万円を超えた贈与金額は一律20%で贈与税が課税され、相続税の計算時に差し引くことができます。

相続時精算課税制度(住宅取得等資金)について詳しくはこちら

 ⇒【国税庁】相続時精算課税選択の特例
相続時精算課税制度(一般)について詳しくはこちら

 ⇒【国税庁】相続時精算課税の選択

注意!相続の方が得になる場合も

大きなメリットのある贈与税の特例ですが、将来、親の自宅を相続する予定のある場合は注意が必要です。

亡くなった親から自宅を引き継ぐことになった時に、相続税の計算で土地の評価額が最大80%も下がる「小規模宅地等の特例」がありますが、この特例の対象になるには、自宅を相続する人が亡くなった人の「配偶者」または「同居していた親族」という条件を満たす必要があります。もし、相続時精算課税制度を使って親の自宅を既に取得していたり、親からの資金援助で手に入れた家に別居で住んでいた場合は、この特例が使用できません。

例えば、贈与税の非課税枠を使いマイホームを購入したものの、結果的に「同居を続けて、5000万円の土地が80%減の1000万円の評価で済む小規模宅地等の特例を使い、遺産総額が相続税の基礎控除内に収まって課税されなかった」というケースになるかもしれませんので、将来、土地の相続を予定している場合は、慎重に検討する必要があるでしょう。

ちなみに、配偶者も同居していた親族もどちらも存在しない場合には、『別居だけど3年以上借家に住んでいる親族』が特例を受けることができます。もし、別居している子に将来自宅を相続する予定がある場合は、家を購入させず賃貸住まいさせておく方が良いかもしれません。


ページトップへ