物件から見たマンション投資のリスク回避策

マンション経営には「空室」「家賃滞納」「老朽化」「災害」など、さまざまなリスクが伴います。
中でも「どのマンションに投資しようか」の投資物件選びがリスク回避の第一関門といわれています。どのような視点で投資物件を選べばリスクを回避できるのでしょうか。

投資物件はワンルームマンションかファミリーマンションか

特に初めてのマンション経営で、投資物件選びにおいて頭を悩ませるのが単身者向けのワンルームマンションか、家族向けのファミリーマンションかの選択です。まずはそれぞれの投資のメリットとリスクを見ましょう。

<ワンルームマンション経営のメリットと想定リスク>

ワンルームマンション経営は、初期投資額が少ないので手軽に始められるのが魅力です。
ファミリーマンションを1戸購入するには数千万円の初期投資が必要ですが、ワンルームマンションの一室購入なら1,000万円以下の初期投資も可能です。

投資利回りが高いのも魅力です。

ワンルームマンションは初期投資額が少ないので投資利回りは新築物件で5%前後、中古物件で8~9%が相場で、ファミリーマンションは物件購入の初期投資額が高くなるので、投資利回りは中古物件でも5%前後といわれています。

半面、次のようなリスクが想定されます。

●運用益が低い
ワンルームマンションは初期投資額の低さが魅力ですが、ファミリーマンションと比べると賃貸料が安いので、その分運用益が低くなります。

●空室リスクが高い
ワンルームマンションは入居者の入退去が頻繁です。入居者が退去した後、次の入居者が見つかるまでの空室期間が長引くと、その間の賃貸料収入がゼロになります。

●融資を受け難い
ワンルームマンション経営は事業性が低い、資産価値が低いなどの理由から金融機関の事業ローン融資を受け難いといわれています。

ワンルームマンション経営を始める場合、新築物件は販促費が販売価格に上乗せされているので物件購入費が高くなり、その分投資利回りが低くなる傾向があります。
購入費の大半を住宅ローンで賄った場合、賃貸料からマンション管理費やローン返済額を差し引くと赤字になる可能性も高まります。

したがって、投資効率を優先するなら中古物件が買い得になります。
中古物件なら販売価格は需要と供給の市場価格で決まるので、適正価格で購入でき、高利回りが期待できます。

ただし、中古物件には

(1)担保力が低いのである程度の自己資金が必要
(2)築年数が古いと耐震性が弱い場合がある
(3)間取りが古い場合がある、住戸面積が20平米未満で部屋が狭い物件がある

などの可能性があります。投資物件を選ぶ際は注意が必要でしょう。

<ファミリーマンション経営のメリットと想定リスク>

ファミリーマンション経営は、賃貸料収入の安定性が魅力です。
家族世帯が入居してくるので、長期入居の可能性が高いからです。
また、単身世帯と異なり家族世帯の場合は夫婦共働きが多いなど収入が安定した入居者が集まりやすく、家賃滞納リスクが低いともいわれています。

そのほかに以下のようなメリットも挙げられます。

●共用施設が充実しているので長期入居者が多い
ファミリーマンションはワンルームマンションよりエントランスホール、ロビー、植栽などの共用施設が充実しているのが通常です。
このため入居者の満足度が高く、長期入居率を高めています。
これも賃貸料収入の安定性確保につながっているようです。

●超高層マンションは流動性があるので売却益確保も可能
ファミリーマンションの中でも特に超高層マンションは、販売価格が高いので購入者も富裕層や資産家が多く、中古市場での流動性が高いとされています。
したがって運用益で投資を回収した後は売却により売却益を確保できる可能性もあります。

半面、次のようなリスクが想定されます。

●投資利回りがワンルームマンションより低い
ファミリーマンションの場合、中古物件に投資しても2,000万円以上の初期投資が必要です。
初期投資額が多いからといって、ワンルームマンションの2倍、3倍の賃貸料設定はできません。したがって、投資利回りはワンルームマンションより低水準になります。

ワンルームマンションの場合、中古物件の投資利回りは8~9%が相場といわれているのに対し、ファミリーマンションのそれは5%前後といわれています。その差は歴然です。

●管理費がかさむ
ファミリーマンション経営の投資利回りを低くしている要因の1つが管理費の高さです。
住戸面積が広い分、ワンルームマンションより管理費がかかるは当然ですが、エアコンは一室1台が常識の現在、ファミリーマンションは部屋数が多いだけにエアコンのメンテナンス費も相当な出費になります。

入居者の入退去による原状回復費は、ワンルームマンションなら数万円程度で済みますが、ファミリーマンションの場合は30万円以上かかることも珍しくないようです。

●入居者募集期間が長期化する場合も
ワンルームマンションの場合は入居者が単身なので、立地や物件が自分の条件に合えば直ぐに入居してくれます。
しかし、ファミリーマンションの場合は親の通勤、子供の通学などで家族の意見が分かれ、入居するか否かの決定に時間がかかるケースが少なくありません。

「家族で検討した結果、入居は見合わせる」の入居希望者が相次ぐと、必然的に入居者募集期間が長期化し、その間の賃貸料収入がゼロになります

このようにワンルームマンション経営もファミリーマンション経営もそれぞれ一長一短があります。
しかし、経営の難易度からはファミリーマンション経営のほうが高いようです。
したがって、マンション経営初心者の場合は、初期投資額が少ないワンルームマンション経営から始めるのが無難でしょう。

新築マンションか中古マンションか

マンション経営は新築マンションと中古マンションとでもリスクのあり方が異なります。

新築マンションの場合は、間取りや住宅設備が入居者ニーズに合った物件が多く、空室リスクが低いのが魅力です。
中古マンションの場合は、間取りや住宅設備の面で入居者を確保しにくい傾向があります。
しかし探せば低価格で利回りの高い物件もあり、さらに物件の管理状況を確認してから購入できるのが魅です。

<新築マンション経営のメリットと想定リスク>

新築マンションは少額の自己資金で経営を開始できるのが一番の魅力です。

物件評価次第ですが、評価の高い新築マンションは総額の95%が金融機関の事業ローン融資の対象になる場合があります。
少額の自己資金でマンション経営を開始できるだけでなく、金融機関の第三者査定でそれだけの資産価値を評価されているとの安心感も得られます。
また、20年以上の長期空室保証など空室リスク対策ができるのは、新築の優良物件のみとなります。

空室リスクを回避でき、耐用年数も長いので、投資直後から安定した賃貸料収入を長期的に確保できる可能性が高く、融資返済も計画通り実行できる可能性が大でしょう。

半面、物件購入価格が高いので「中古マンションより投資利回りが低い」「事業ローン返済期間が長期にわたるので、その間の突発事態(病気長期入院など)発生で予想外の出費がかさみローン返済が不可能になる恐れがある」などのリスクが想定されます。

<中古マンション経営のメリットと想定リスク>

中古マンションは新築マンションより販売価格が安い(新築マンションの20~30%安が相場)ということがあります。
そのため、中古マンション経営は初期投資額を抑えられるのが一番の魅力です。
初期投資額が低い分、新築マンションより高い投資利回りが期待できます。
中古マンションはすでに入居者がいるので管理状況を確かめやすく、管理品質の高い物件を選べる可能性も高まります。

半面、次のようなリスクが想定されます。

その第1が耐用年数の短さです。

マンションの寿命はおよそ60年といわれています。
築年数が深い中古マンションの場合、それだけ事業期間が縮まります。事業期間が短い分、賃貸料収入を確保する期間も少なくなるわけで、場合によっては投資を回収する前に大規模修繕や建て替えで追加投資を迫られる可能性があります。
最悪の場合は赤字垂れ流しで経営撤退のケースもあります。

間取りや住宅設備が古いのも中古マンション特有のリスクとされています。

マンションも分譲年代によって間取りや住宅設備、共用設備にトレンドがあります。
中古マンションには時代遅れの間取りや住宅設備が少なくありません。それが入居者募集のネックになり、空室期間が長引く要因にもなります。

このほか、中古マンションは融資可能限度額が低いので、投資にはまとまった自己資金が必要、新築マンションより維持・管理費が高いなどのリスクも想定されます。

このように、新築マンションと中古マンションとでは投資リスクのあり様がかなり異なっています。

ただ、マンション経営者の間では「新築物件はどちらかといえばローリスク・ローリターンなので初心者向き、リスクが低くて高利回りの中古お宝物件を探し出すにはマンションの目利きが必要なので、こちらは経験者向き」といわれています。

マンション一室投資か一棟投資か

マンション経営の経験を積み、投資もある程度回収し、資金的な余裕ができて事業拡大を図る時に悩むのが「マンション一室投資(区分投資)か一棟投資か」の選択でしょう。
それぞれにメリットと想定リスクがあるので、自分の投資目的と長期的展望を踏まえて考える必要がありそうです。

<一室投資のメリットと想定リスク>

マンション一室投資で事業拡大を図る場合は、最初は学生向けのワンルームマンションに投資し、次は社会人向けのワンルームマンションに投資し、さらに賃貸料を高めに設定できるファミリーマンションに投資、あるいは都内23区内と23区外に一室ずつという具合に、入居者層やエリアを分けて一室投資件数を拡大し、投資リスクの分散を図るのが常道とされています。

一方、一室投資の一番のメリットは、初期投資額が少なくて済むことです。

ワンルームマンションなら都内23区内でも1,000万円以下の物件が多数ありますし、23区外なら500万円程度の物件も探せます。

また、入居者を自分で選べるのもメリットです。
一棟投資の場合、新築マンションは別にして価格が手頃な中古マンションに投資すると入居者がすでにいるので、自分で入居者を選べません。

しかし、一室投資なら中古マンションでも入居者がいない物件に投資できるので、自分の眼鏡にかなった入居者を選べます。入居者のよしあしはマンション経営に大きく影響するので、メリットは大きいでしょう。このほか、ワンルームマンション経営の項でも述べた通り、投資利回りが高いのもメリットです。

半面、これもワンルームマンション経営の項で述べた通り、運用益が低い、空室リスクが高い、事業融資を受け難いなどのリスクが想定されます。

<一棟投資のメリットと想定リスク>

マンション一棟投資の一番のメリットは空室リスクが低いことです。

一棟丸ごと所有することになるので、50戸以下の小規模マンションでも2室や3室の空室が発生しても入居率は90%以上です。
経営が大きく揺らぐことはありません。

また、高収入が見込めるのも一室投資にないメリットです。
初期投資額の大きさは一室投資の比ではありませんが、半面、一室投資では確保できない高収入が一挙に見込めます。

さらに安定資産を確保できるのもメリットといわれています。

一室投資だと地権は持分所有のみですが、一棟投資の場合は建物まるごとの所有になるので、当然その敷地も自家所有になり、小型マンションでも100~300坪のまとまった土地を入手でき、安定資産の確保にもつながります。

半面、次のようなリスクが想定されます。

●一室投資よりリスクが高い
一棟投資の場合は、築年数が深い小型の中古マンションでも購入額は1億円以上です。
初期投資額が一室投資の比ではないので、運悪く不人気物件を購入してしまった場合は大きな負担を背負うおそれがあります。

●リスク分散ができない
地震や台風などの自然災害で損害保険の免責額を超える被害を受けると、多額の被害復旧費を自己負担しなければならなくなります。
あるいは隣接地に超高層マンションが建って日当たりが悪化など住環境の変化で入居者確保が難しくなるケースも考えられます。
こうした場合、一棟所有だけにリスク分散のしようがありません。

●管理・修繕負担が大きい
日常的な建物の管理はもとより、大規模修繕、老朽化や自然災害被災に伴う建て替えなど、すべてのランニングコストを負担しなければなりません。

●売却に時間がかかる
さまざまな理由から売却する時、一室投資なら買い手を見つけるのは比較的容易です。
しかし、一棟となると売却額が高額になるので買い手は法人など一部に限られ、売却に時間がかかるのが常です。

結局、一室投資か一棟投資かの選択で基準になるのは、リスクをどう捉えるかになるようです。
リスク分散で安定経営を目指すなら一室投資の拡大、リスク織り込みで一挙に高収益を目指すなら一棟投資といえそうです。

東京のマンションか地方都市のマンションか

「マンション経営をするなら東京か地方都市か」で頭を悩ませている投資家も少なくありません。

投資家の多くは「東京は需要は多いが物件価格が高く、マンション経営の競争も激しい。
地方都市は需要は少ないが物件価格が安く、競争もそれほど激しくない」という視点で「高収益を目指すなら東京、安定経営を目指すなら地方都市、さてどちらにしようか」と悩んでいます。

マンション経営の第一歩は立地、すなわち賃貸需要の多寡を見極めるところから始まります。加えて、賃貸需要は現在だけではなく、将来にわたってあるのかを見極めるのが重要です。
そこで、おおまかに、それぞれの一般的なメリットとリスクを見ておきましょう。

<東京のメリットと想定リスク>

賃貸需要が多く、投資物件の選定さえ誤らなければ空室リスクも低いのが東京のメリットです。
2020年の東京五輪を控えてマンション価格が高騰しており、賃貸料収入の運用益だけでなく、価格上昇による売却益確保を期待できるのが魅力との見方もあります。

半面、物件購入費が高すぎるため、地方に比べ投資利回りが低いのがリスクです。
中には「収支トントン、最悪は赤字も少なくない」との指摘もあります。

<地方都市のメリットと想定リスク>

賃貸需要の多いエリアをうまく選べば、物件価格は東京より格段に安いので投資利回りが高く、高収益が期待できます。
例えば、福岡市の場合、新築マンションなら7~8%、中古マンションなら10~12%の投資利回りを確保できるといわれています。

半面、地方都市の大半は人口減が予測されており、今は大丈夫でも5年後、10年後は空室率上昇のリスクが懸念されています。

投資経験が豊富なマンション経営者の間では「総合的に見てリスクが低い投資先は東京のマンション」の認識が定着しています。それはなぜでしょうか。

結論から言うと、交通インフラが継続的に整備され、オフィスビル、商業施設、娯楽施設などが集積している東京23区内は地方都市からの人口流入が続き、賃貸需要が将来的にも安定しているからです。

例えば、都道府県別の人口移動を見ると、転入者が増加している都府県のうち東京都は約7万3,000人増で、2位の神奈川県の約1万5,000人増に比べ4.9倍を示し、2位以下を圧倒しています。
この転入者の大半が23区内に居住しているのはいうまでもありません。

2015年の23区内の単身世帯数も200万人強で、東京都総人口約1,300万人の15%を占めています。
この膨大な数いる単身世帯の90%が賃貸マンションなどの賃貸集合住宅居住者と推計されています(いずれも総務省統計)。

世界レベルで経済機能の集積度の高さも東京の特徴の1つです。
東京に人が集まるのは、東京にヒト、モノ、カネ、情報が世界中から集まる仕組みができているからです。

上場企業約3,600社中半分の約1,800社が23区内に本社を置いています。そのほうが事業展開に有利だからです。
結果、有効求人倍率も高く、2014年の東京都のそれは1.53で全国平均1.08を45ポイントも上回っています。
これは年間賃金の高さにもつながっており、2013年の東京都の労働者1人当たり年間賃金は全国平均より102万円高くなっています。
賃金水準の高さは優良賃貸マンションの入居ニーズを高めます。

さらに、バブル景気時の地価高騰で地方都市に展開していた大学・研究機関の都心回帰による教職員、学生、研究者などの23区内への流入も盛んです。

こうしたマクロな市場動向を踏まえると、東京23区内のマンション経営のほうが成功の確率は高そうです。

ただ、リスク対策さえ怠らなければ成功の確率が高いのかというと、それだけではないようです。事業のカギは商品が握っています。
これはマンション経営でも変わりません。マンション経営における商品の品質とは、住みやすさです。
それには投資家自身が「長く住み続けたい物件か否か」というポイントが判断基準になるようです。