生前贈与加算「3年→7年」の大改正!孫にきちんと贈与するポイント、3つ【税理士の解説】

目に入れても痛くない、かわいい孫に財産を残したい……そんな人たちに活用されてきた「年110万円の暦年贈与」。2023年度の税制改正によって、暦年贈与の「生前贈与加算」が3年から7年へと延長されることになりました。きちんと改正内容を知っておかなければ、せっかくの贈与が水の泡になることも。西口孟志税理士事務所の西口孟志税理士が、財産をきちんと残すための生前贈与のポイントを解説します。

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生前贈与の改正…知っておくべき3つのポイント

相続税対策として生前贈与を行っておられる方や考えている方は少なくないでしょう。筆者も相続税の節税として最初にアドバイスする手法のひとつです。この生前贈与の税制が改正されることになりましたので、ポイントを3つに絞って説明します。

まずは、生前贈与加算について簡単にお伝えいたします。

相続税は、亡くなった時に所有していた財産(以下、相続財産)に対して税金が課税されます。そこで、亡くなる前、すなわち生前に子や孫に財産を贈与しておけば、相続財産の金額を減らすことができ、相続税を減らすことができます。それを利用して、贈与税のかからない年間110万円以下の金額を贈与して、相続税の対策とすることが行われています。

しかし、そう簡単な話ではなく、亡くなる前3年間に贈与した財産については、相続財産に加算して計算しなくてはいけません。この制度を「生前贈与加算」と呼んでいます。

ポイント1 改正の時期

生前贈与加算の制度については、令和5年度の税制改正で変更されることが決定しました。変更後の制度が適用されるのは、令和6年1月1日以降に行われる財産の贈与が対象です。令和6年以降に発生した相続ではなく、財産を贈与した時点がいつなのかが重要です。令和5年12月末までに行われる財産の贈与は、今まで通りの制度が適用されますので、生前贈与を考えている方は、令和5年中に贈与することをお勧めいたします。

ポイント2 加算期間の延長

改正により、従来は亡くなった日から3年前までの贈与が相続税の加算の対象だったところ、令和6年以降は亡くなった日から7年前までの贈与が相続税の加算の対象となります。あくまで、令和6年以降に贈与した財産が対象ですので、たとえば、令和9年1月に亡くなった方が令和5年12月に生前贈与を行っていても、その財産は相続税の加算の対象になりません。

この改正により、令和6年以降は毎年年間110万円以下の金額を贈与して、相続財産を少なくさせておくという相続税対策が使いにくくなってしまいます。今までは4年以上前に贈与した財産には税金がかからなかったのに、今後は税金がかからないのは、8年以上前に贈与した財産のみということになります。

下の【図表1】【図表2】は、もともと1億円を持っていた人が、10年間毎年100万円ずつ生前贈与を行い、その後に亡くなったとしたときの例です。上段が保有している財産の金額で、毎年100万円ずつ減少しています。下段はその年に贈与した金額を表しています。

令和5年以前の場合に赤枠の9,300万円に対して、相続税が課税されます。一方で令和6年以降の場合は赤枠の9,700万円に対して相続税が課税されます(厳密には100万円の控除ができるのですが、今回は簡略化のために省略します)。

【図表1】令和5年以前 ※単位:万円



【図表2】令和6年以降 ※単位:万円


ポイント3 制度の対象者

生前贈与加算の制度対象者が、「財産を相続した者」であることにも注意が必要です。一般的に、子どもは相続が発生した際、相続人として財産を相続することが多いため、生前贈与を受けていた場合は、加算の対象になる可能性が高いですが、孫は相続で財産を受け取らないことが多いかと思います。つまり、子どもが存命である場合には、孫に対して生前贈与を行うことで、生前贈与加算の対象とはならずに、財産を移転させることが可能となるわけです。

これは、改正の前から同じなのですが、改正によって制度の対象者に変更がなかったという点が重要です。相続財産を受け取らない孫への贈与は、従来までの制度と同じ制度が適用されます。

ただし、遺言や生命保険金などで孫も財産を相続するという場合には、相続人ではなかったとしても、生前贈与加算の対象となりますので注意してください。逆に相続人である子どもであったとしても、財産を相続しないのであれば、当然生前贈与加算の対象とはなりません。

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生前贈与とともに検討したい「相続時精算課税制度」

ここまで、生前贈与加算の改正について説明してきました。その内容は、実質的な相続税の増税となっています。生前贈与の方法が使えなくなるわけではありませんが、使いづらくなってしまいます。特に、相続人になる可能性の高い配偶者や子どもに生前贈与を行う場合には注意が必要です。

なお、今回の改正では、これに加えて相続時精算課税制度の改正も同時に行われています。細かい説明は割愛しますが、そちらの改正は、制度の利便性を高め、人によっては相続税の対策として利用しやすい制度に変更されます。生前贈与加算の対象となる可能性の高い配偶者や子どもに財産を移転させる場合には、令和6年以降、相続時精算課税制度を活用することも検討する必要が出てきます。

孫に生前贈与をする場合には、生前贈与加算の対象とならない可能性が高く、従来通りの贈与が有効となることが多いでしょう。しかし誤った内容で贈与してしまっていると、相続の際に多くの税金を課税されてしまうこともあり得ます。慎重に生前贈与について検討してみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

西口孟志
西口孟志税理士事務所 税理士

1994年1月30日生まれ。京都府出身。
同志社大学経済学部卒業後、日本電気株式会社に入社。
その後、EY税理士法人等の複数の税理士法人にて、個人事業主から上場企業まで幅広く税務会計の支援に従事。
2022年に京都市にて、西口孟志税理士事務所を開業。
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西口孟志税理士事務所 税理士 1994年1月30日生まれ。京都府出身。 同志社大学経済学部卒業後、日本電気株式会社に入社。 その後、EY税理士法人等の複数の税理士法人にて、個人事業主から上場企業まで幅広く税務会計の支援に従事。 2022年に京都市にて、西口孟志税理士事務所を開業。