不動産売買契約の融資利用特約とは?

融資利用特約とは

「融資利用特約」とは、「住宅ローン特約」とも呼ばれることもあり、買主が売買代金の一部または全部に融資を利用することを条件に売買契約を締結したものの、予定した融資の全部または一部が不成立となった場合、買主は契約を解除できるという特約です。その時は、既に授受された手付金も返還されます。

住宅を購入する人の多くが住宅ローンを利用するため、不動産売買契約書には、ほとんど融資利用特約が付いています。また、不動産業者が住宅ローンのあっせんをする場合には、融資利用特約を定めることが法律で義務付けられており、もし、あっせんが無かったとしても、融資利用特約を付することが必要だという法律の運用上のルールがあります。

 融資利用特約の種類

①解除条件型

融資が非承認となった場合、自動的に契約が解除される

 条文例「融資の承認が得られなかった場合、契約を解除する」

②解除権留保型

融資が非承認となった場合、解除する旨を申し出て解除する

 条文例「融資の承認が得られなかった場合、契約を解除することができる」

 ※減額ならば親などから足りない分を援助してもらい契約を進めることも可能

融資利用特約の目的

「融資利用特約」の目的は【買主保護】です。融資さえ下りれば、どんな条件でも、どこの金融機関でも構わないというものではなく、あくまでも「買主の意向を反映した融資内容」とし、買主が計画的に無理のない返済が続けられるようにすることが大切です。

宅建業者がなんとか契約を成立させようと、買主の希望しない条件で融資を強引に通してしまうようなことがないよう、融資が下りない場合は無条件で契約を解除できるようにします。

当然、契約解除とは契約を白紙に戻すということなので、買主が契約締結時に支払った手付金や仲介手数料は全て返還され、契約前の状態に戻すことになります。

融資利用特約の期日

通常、融資利用特約の期日は、売買契約締結後30日程度で設定します。

事前審査が承認されていれば、買主の不告知などの問題が発生しない限り、この期間内で審査結果が得られます。

ただし、最初に申し込んだ金融機関で融資が得られなかった場合は、他の金融機関に再度申請する、もしくは、融資以外の資金調達をする必要があります。このとき、再審査をしている間に特約期間が経過したり、結局資金調達が出来なかったりというトラブルが発生する可能性もあります。その場合は、すぐに期日の延長など変更を申請する必要があります。

融資利用特約におけるトラブル

金融機関の事前審査は本審査と同様に精度が高く、事前審査で承認を得ていれば本審査で否定されることはほとんどありません。ただし、買主による不告知や虚偽報告が理由で非承認となる場合は、特約を無条件で解除することはできません。

また、購入を止めたくなり、わざと契約の解除のため意図的に融資の持ち込みを怠ったりした場合は、買主の契約不履行となり損害賠償請求を受ける可能性もあります。

事前審査がない融資や想定外の内容など、融資が非承認となるケースがないわけではありません。非承認のリスクを避けるためにも、宅建業者としっかり資金計画を練り、買主の属性面の確認、不動産の調査、金融機関との入念な打ち合わせをして、適切な融資利用特約の利用をすることを心がけることが重要です。

[記事公開日]:2021/10/09[最新更新日]:2021/10/10