住宅ローンを夫婦で組む際、名義人以外が返済や頭金の負担を行うと、贈与税がかかる可能性があります。本記事では、夫婦で組める住宅ローンの種類と贈与税のリスク、贈与税を回避する対策を分かりやすく解説します。親からの援助における非課税制度や贈与税が発生した場合の申告方法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
贈与税とは?
贈与税は、個人から財産を無償で受け取った際に受け取った側に課される税金です。親や配偶者などから現金や不動産などを譲り受けると、原則として贈与税の課税対象になります。住宅購入資金も例外ではなく、頭金や返済資金の援助を受けた場合は注意が必要です。
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に受け取った金額の合計から、基礎控除額の110万円を差し引いた金額に対して課税されます。つまり、年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。ただし、住宅ローンは名義人以外が返済資金を負担すると、夫婦間であっても贈与と判断される可能性があります。
贈与税は、個人から贈与により財産を取得した個人に対して、その財産の取得の時における時価を課税価格として課される税で、相続税の補完税としての性格を持っています。
出典:財務省「贈与税に関する資料」
夫婦で住宅ローンを組む3つの方法と贈与税のリスク
| 形態 | 債務者 | 住宅ローン控除 | 贈与税リスク |
|---|---|---|---|
| 単独ローン | 1人 | 1人のみ | 配偶者が返済・頭金等を負担した場合に、贈与認定リスク |
| 連帯債務 | 2人(共同) | 2人とも可(要件を満たす場合) | 負担割合と持分一致で回避 |
| ペアローン | 2人(別契約) | 2人とも可(要件を満たす場合) | 負担割合と持分一致で回避 |
住宅ローンの組み方によって、贈与税が発生するリスクは大きく異なります。ここでは、夫婦で住宅ローンを組む際の代表的な3つの形態とそれぞれの特徴、贈与税のリスクを解説します。
単独ローン
単独ローンは、夫または妻のどちらか一方のみが債務者となり、単独で住宅ローンを組む形態です。住宅の名義も単独名義にすれば、夫婦間の資金移動がなく名義人が自己資金で取得・返済している限り、通常は贈与税の問題は生じにくいです。ただし、頭金を配偶者が負担したり、配偶者の収入でローンを返済したりすると贈与とみなされる可能性があります。
借入可能額は主に債務者一人の年収や返済能力に基づいて審査されるため、ペアローンや連帯債務に比べて借入可能額が少なくなる傾向があります。
連帯債務
連帯債務は、夫婦が1つの住宅ローンを共同で借り、2人で返済義務を負う形態です。たとえば、住宅金融支援機構のフラット35では、夫婦等での連帯債務を利用できます。
夫婦それぞれの負担割合に応じて持分を設定すれば、贈与認定リスクを下げられます。また、要件を満たせば2人とも住宅ローン控除を受けられるメリットがあります。
ペアローン
ペアローンは、夫婦それぞれが別々の住宅ローン契約を結び、互いに連帯保証人になる形態です。各自が独立した債務者となるため、要件を満たせば2人とも住宅ローン控除を利用できます。各自の負担額に応じて持分を設定すれば、贈与認定リスクを下げられます。
ただし、一方が単独ローンに借り換えると、残債を免れた側に贈与があったとみなされる可能性があるため、注意が必要です。
原則として贈与税がかからない夫婦間の支出
夫婦間で金銭のやり取りをする際、すべての場合で贈与税がかかるわけではありません。ここでは、夫婦間の支出で原則として贈与税がかからない2つのケースを紹介します。
① 基礎控除110万円以下の贈与
1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与額の合計が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。配偶者からの贈与であっても、他の人からの贈与と同様に基礎控除110万円が適用されます。
ただし、同じ年に複数回贈与を受けた場合や、配偶者以外からの贈与がある場合は、その合計額が110万円を超えると課税対象になります。年間の贈与額は累計で判断されるため、注意が必要です。
② 生活費や教育費
夫婦には互いに生活を支える義務があるため、生活費や子どもの教育費として通常必要と認められる範囲内で渡すお金に贈与税はかかりません。専業主婦世帯での生活費の支給はもちろん、共働きで共同口座から生活費を支払う場合も、通常必要と認められる生活費に充てられる限り非課税扱いとなります。
ただし、生活費名目であっても通常必要と認められる範囲を超える金額や、実際には貯蓄・投資に回される分は、贈与税の対象になる可能性があります。「生活に必要な範囲内であること」が非課税の条件です。
住宅購入の際、夫婦間で贈与税がかかる5つのケース
住宅購入時や返済中に夫婦間で贈与税が発生するケースはさまざまです。ここでは、とくに注意が必要な5つのケースを具体的に解説します。
ケース①:配偶者名義のローン返済を肩代わりしている場合
住宅ローンの名義人以外が返済すると、その支払い分は贈与と判断される可能性があります。支払い分は生活費等とは別の性質と判断されることがあり、夫婦間であっても贈与税の課税対象となるケースがあります。
共働きで一部を負担している場合でも、年間110万円を超えるときは注意が必要です。配偶者の収入から返済している場合は、その金額を記録しておくとよいでしょう。
ケース②:頭金を出した人と住宅の名義が一致していない場合
頭金を妻が負担しても、住宅が夫単独名義の場合は贈与とみなされる可能性があります。頭金は住宅購入時の「出資」と考えられるため、名義とのズレが問題になるのです。
親からの援助を含む場合も最終的な名義設定が重要となるため、誰がいくら負担したかを明確にし、その割合に応じて名義を設定しましょう。
ケース③:ローンは単独名義なのに共有名義で登記している場合
住宅ローンを夫が全額負担しているのに、登記を夫婦共有にすると贈与扱いになる可能性があります。持分は「実際に負担した金額」を基準に決める必要があります。
持分と実際の負担額が一致しない場合、その差額部分は贈与税の課税対象です。形式的に半分ずつにすると、実際の負担割合との差額に対して贈与税が課される可能性があるため、注意しましょう。
ケース④:ペアローンから単独ローンへ借り換えた場合
ペアローンを単独名義にすると、残債を免れた側から債務を引き継ぐ側への贈与とみなされる可能性があります。ただし、負担付贈与として扱われる場合は、残債を免れた側の持分に相当する不動産評価額から、引き継ぐ債務額を差し引いた額が課税対象となります。
ケース⑤:繰り上げ返済を配偶者の資金で行った場合
購入時に持分とローン負担を適切に設定していても、繰り上げ返済で配偶者の資金を使うと贈与認定リスクが生じます。たとえば、夫名義の住宅ローンを、妻の貯金や相続で得た資金で一括返済した場合、その金額が贈与とみなされる場合があります。
繰り上げ返済は通常数百万円単位の金額になるため、配偶者の資金を使うと基礎控除110万円を大きく超え、高額な贈与税が課される可能性があります。住宅ローンの返済は、贈与認定リスクを避ける観点では、名義人本人の資金で行う形が望ましいです。どうしても配偶者の資金を使う必要がある場合は、事前に税理士へ相談しましょう。
住宅ローンにおいて夫婦間の贈与税を回避する4つの対策
前の章で解説した5つのケースを踏まえ、夫婦間の贈与税を回避するための具体的な対策を紹介します。対策を事前に理解し、贈与税のリスクを防ぎましょう。
対策①:住宅ローンや頭金の負担割合に合わせて名義・持分を決める
贈与税を避ける基本は「誰がいくら負担したか」と「登記上の持分」を一致させることです。頭金や住宅ローンを夫婦それぞれが負担している場合は、その割合に応じて共有名義にしましょう。
負担と名義が一致していれば、原則として夫婦間で贈与があったと判断されません。たとえば、夫が70%、妻が30%の資金を負担する場合は、持分も同じ割合に設定する必要があります。
対策②:配偶者名義の住宅ローンは原則として肩代わりしない
住宅ローンの返済は、贈与認定リスクを避ける観点では、名義人本人の資金で行う形が望ましいです。名義人以外が返済を続けると、返済額が贈与とみなされる可能性があります。
共働きの場合でも、返済口座や資金の流れを明確にしておくことが重要です。どちらの収入から返済しているかを記録に残すことで、税務上のトラブルを避けやすくなります。
対策③:ペアローンを単独名義にする場合は「負担付贈与」を検討する
ペアローンから単独名義に切り替える際は「負担付贈与」の仕組みを検討できます。これは、不動産評価額から引き継ぐ債務額を差し引いた額に対して贈与税が課税される方法です。
ただし、贈与者側に譲渡所得税が発生する可能性があるため、贈与税が軽減されても譲渡所得税の方が高額になるケースがあります。贈与税と譲渡所得税の両方を試算し、総合的な税負担を比較することが重要です。借り換えを検討する際は、事前に税理士へ相談するとよいでしょう。
対策④:住宅購入前・借り換え前に専門家へ相談する
住宅購入時や借り換え時は、名義や資金計画の変更が生じやすいタイミングです。一度登記や契約をしてしまうと、後から修正するのは難しくなります。
とくに高額な住宅購入では、わずかな持分のズレでも大きな税負担につながるため、専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。事前に税理士や司法書士などの専門家に相談し、贈与税のリスクを防ぎましょう。
親や祖父母から住宅資金の援助を受ける場合の非課税制度
親や祖父母から住宅購入資金の援助を受ける場合、一定の条件を満たせば贈与税が非課税になる制度があります。夫婦間の贈与税とは別の制度ですが、住宅購入時には必ず確認しておきましょう。
住宅取得等資金の贈与税非課税制度とは
父母や祖父母など直系尊属から住宅の新築・取得・増改築のための資金援助を受けた場合、一定の要件を満たすことで「住宅取得等資金の贈与税非課税制度」が適用されます。これは、一定額まで贈与税が非課税となる制度で、基礎控除110万円とは別枠で利用が可能です。
非課税限度額は、住宅の性能(省エネ住宅等)や契約時期によって異なります。2024年1月以降の制度では、省エネ等住宅で1,000万円、その他の住宅で500万円が非課税限度額の目安となっていますが、最新の金額は国税庁で確認が必要です。非課税制度が適用されるには、受贈者の年齢や所得制限などの要件があります。
非課税制度を利用する際の注意点
非課税制度を利用する場合でも、贈与税の申告は必須です。申告をしないと非課税が適用されません。夫婦それぞれが親から援助を受ける場合、各自が非課税枠を利用できます。
援助を受けた金額分は、住宅の持分に反映させる必要があります。名義と資金負担の一致が重要なため、援助を受けた側の名義で持分を設定しましょう。非課税限度額を超える部分は、基礎控除110万円を差し引いた額に対して贈与税が課されます。
制度の内容や金額は税制改正で変わるため、最新情報を国税庁のホームページで確認しましょう。親からの援助は夫婦どちらが受け取るかによって税務上の結論が変わり得ます。受贈者が誰か(夫婦どちらが贈与を受けたか)、資金が実際に誰の口座から支出され住宅取得に充てられたか(資金の流れ)、登記上の持分が実際の負担割合と整合しているか(持分設定)といった事情を総合して判断されます。贈与認定リスクを避けるためには、援助を受けた側の名義で持分を設定することが重要です
例外的に贈与税がかからない夫婦間の制度・ケース
夫婦間の贈与には、一般的なルールとは別に例外的な制度やケースが存在します。ここでは、夫婦間で贈与税がかからないパターンを2つ紹介します。
婚姻20年以上の夫婦が使える「おしどり贈与(配偶者控除)」
「おしどり贈与(配偶者控除)」は、婚姻期間が20年を超える夫婦が自宅やその購入資金を贈与する場合に使える特例です。一定の条件を満たすと、最大2,000万円まで贈与税が非課税になります。また、基礎控除110万円と併用可能なため、合計で2,110万円まで非課税となります。
対象は居住用不動産またはその取得資金に限られ、実際に住んでいる、または住む予定があることが必要です。賃貸用・投資用不動産は対象外で、法律上の婚姻関係にある配偶者間の贈与が対象となります。また、贈与税の申告が必須となります。同一の配偶者からの贈与について、一度のみ利用可能な制度です。
住宅取得時の一般的な節税対策とは異なり、条件が厳しい例外的な制度であることを理解しておく必要があります。
離婚時の財産分与は贈与税の課税対象外
離婚に伴う財産分与は、預貯金や不動産の移転であっても原則として贈与税の対象外で、金額が大きくても非課税として扱われます。これは、婚姻期間中に夫婦で築いた財産を公平に分ける行為と考えられており、生活費や教育費以外の通常の夫婦間贈与とは扱いが異なります。
ただし、一方に著しく偏った分け方や、贈与税逃れを目的とした離婚と判断される場合は、贈与税が課される可能性があります。財産分与の金額や内容が一般的に妥当な範囲であることが重要です。
夫婦間で贈与税が発生した場合の申告方法
夫婦間の贈与でも、年間110万円の基礎控除を超える場合は申告が必要です。贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日の間に、税務署へ申告・納税する必要があります。
期限までに申告しない、または金額を少なく申告すると、加算税や延滞税が発生する場合があります。資金移動や通帳履歴は税務署に調査される可能性があるため、「申告しなければバレない」は通用しないことが多いです。とくに、住宅購入のような高額な取引では資金の出所が確認されることがあるため、期限内に正しく申告・納税しましょう。
◎贈与税の申告で知っておきたいポイント
- 申告期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
- 申告するのは贈与を受けた側(受贈者)
- 年間110万円を超える贈与は、必ず申告が必要
- 非課税制度を利用する場合も申告は必須
- 無申告や過少申告の場合は、加算税・延滞税が課される
- 期限を過ぎても、調査通知前に自主申告すれば加算税が軽減される
- 不安な場合は税理士や司法書士などの専門家に相談する
住宅ローン・贈与税・夫婦間でよくある質問
Q. 夫名義の住宅ローンを妻の収入から返済すると、贈与税はかかる?
A.
住宅ローンの名義人以外が返済すると、その返済額は贈与とみなされる可能性があり、原則として贈与税の課税対象となります。ただし、年間の返済額が110万円以下で、他に贈与がなければ、暦年課税の基礎控除の範囲内となり、贈与税が生じない場合があります。
Q. 頭金を妻が負担し、住宅を夫名義にした場合は贈与とみなされる?
A.
頭金は住宅購入時の「出資」にあたるため、妻が負担した頭金の額に応じて妻の持分を設定しなければ、妻から夫への贈与として扱われる可能性があります。贈与税を回避するには、負担額と名義を一致させることが大切です。
Q. 夫婦共有名義にすれば、贈与税はかからないと考えてよい?
A.
共有名義にするだけでは不十分です。重要なのは「実際に負担した金額」と「登記上の持分」を一致させることです。形式的に半分ずつの持分にしても、実際の負担割合と異なれば、その差額部分は贈与税の課税対象となる場合があります。
Q. ペアローンから単独名義に変更すると、必ず贈与税が発生する?
A.
必ずしも贈与が発生するわけではありません。負担付贈与として扱われる場合、不動産評価額から引き継ぐ債務額を差し引いた額が課税対象となります。ただし、贈与者側に譲渡所得税が発生する可能性があるため、事前に専門家へ相談するとよいでしょう。
Q. 夫婦間で贈与税が発生した場合、申告しないとどうなる?
A.
贈与税の申告をしないと、本来の贈与税に加えて無申告加算税と延滞税が課されます。税務署は銀行口座の履歴や資金移動を調査の過程で確認することがあり、無申告は発覚する可能性が高いです。気づいた時点で速やかに申告することが重要です。
住宅ローンを組む際は、夫婦間の贈与税リスクに注意しよう
住宅ローンを組む際、夫婦間であっても名義と実際の負担額が一致しないと贈与税が発生する可能性あります。とくに、配偶者名義のローン返済を肩代わりする、頭金と名義が一致しない、繰り上げ返済を配偶者の資金で行うといったケースでは注意が必要です。贈与税を回避するには、負担割合に応じた持分設定が基本となります。不安な場合は、住宅購入前や借り換え前に専門家へ相談しましょう。
東京都の不動産購入・売却・売買の相談に関しては、住建ハウジングを利用するのがおすすめです。住建ハウジングでは、豊富な経験と実績を活かし、お客様一人ひとりのニーズに合わせた丁寧なサポートを提供しています。お問い合わせや詳細については、下記のリンク先から公式ホームページをご確認ください。不動産売却に関するさまざまな情報発信も行っています。
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