契約を取り消したい!住宅購入における契約解除の制限とは

買主が他に良い物件が見つかった、住宅ローンが通らなかったなど、契約の取り消しをしたい場合に行うのが契約の解除です。契約の解除は取引の内容やタイミングにより、いくつかの方法があります。

買主が契約を解除できる主な方法

  1. クーリング・オフによる解除
  2. 手付金の放棄による解除
  3. 解除条件特約(融資利用特約等)による解除
  4. 売主の契約違反による解除
  5. 契約不適合(売主の担保責任)による解除
  6. 誤認・困惑による契約の取り消し
  7. 詐欺・強迫による契約の取り消し
  8. 合意解除(話し合いによる解除)

1.クーリング・オフによる解除

宅建業者と一般消費者間の契約の場合、一定期間内であれば提携した契約を消費者が無条件で解除できる「クーリング・オフ」制度の利用が可能です。売主が宅建業者で、契約をその会社の事務所等(※1)以外の場所(喫茶店等)で行った場合は、クーリング・オフの告知を書面で受けた日から8日以内(※告知がなければ8日過ぎても可能)であれば、クーリング・オフで契約を解除でき、支払い済の手付金等は返還されます。ただし、事前に契約の申込を不動産会社の事務所等(※1)で行っている場合は解除できません。もし、クーリング・オフの可能性を残しておきたいならば、どこで購入の意思を示すかが重要になります。また、買主が自ら希望した場所(自宅や職場など)で契約した場合はクーリング・オフの対象にはならず解除できません。

取引形態 売主が宅建業者、買主が一般消費者の売買
契約の場所 宅建業者の事務所等(※1)以外
適用期限 書面の告知日より8日以内

※1「事務所等」とは店舗、営業所、案内所、モデルルームなどを指します

2.手付金の放棄による解除

手付解除と呼ばれるこの方法は原則理由を問わず、売主の承諾が不要で、「手付金を放棄して解約する」旨を売主に通知するだけで解除できます。ただし、売主が既に契約の履行に着手している場合は手付解除できません。なお、「履行の着手」が何に該当するかは一概に言えず、もし、売主が「履行の着手」を理由に解除を拒んだ時は、履行の着手の内容を弁護士など法律の専門家に相談しなければならないケースもあります。
なお、逆に売主である宅建業者が手付解除をする場合は、手付金を買主に返還し、さらに手付金と同額を支払わなければなりません【手付流しの倍返し】。
また、売主が宅建業者以外の場合、手付解除には期日を設けることが通常で、この「手付解除期日」を過ぎると解除できなくなります。売主が宅建業者の場合は手付解除期日を設定しても無効となり、売主が「履行の着手」があるまでは手付解除できます。

参考

不動産取引の手付金は売買価格の10%程度、手付解除期日は契約締結後30日程度が一般的です。

不動産取引において、当事者間で売買契約を締結し手付金を支払うことで「正式な契約」として成立します。以下の行為は契約誘引行為になり、宅建業者が行うことを禁止されています。このような話を持ち掛けてくる業者には注意が必要です。

  • ・手付金の分割払いまたは後払い
  • ・手付金の貸し付け

3.解除条件特約(融資利用特約等)による解除

契約に解除条件(融資利用特約、買い換え特約等)を付けている場合、「融資非承認」などの解除条件が成就した時は、解除特約に基づき契約を解除することができます。その場合、既に支払い済の金銭はすべて返還され、仲介業者に支払っていた手数料も返還してもらえます。
なお、融資利用特約は融資非承認時の買主保護の為の制度ですが、契約に必ずしも融資利用特約が付いているわけではありません。不動産会社の提携ローンやあっせんローン以外の借り入れ(自主ローン:買主希望の金融機関からの融資や社内融資等)は、適用除外の場合がありますので、その場合は、自主ローンも特約の対象になるよう条文を修正してもらう必要があります。また、融資(ローン)解除期日を過ぎると解除することができませんので、金融機関等の審査が遅れる可能性がある場合は、解除期日を延長してもらうことも必要です。
もし、ローンの事前審査は承認されていたにもかかわらず本審査で非承認になり、その理由が買主による不告知や虚偽告知によるものであれば、特約を無条件で解約ということにはできません。また、契約後に解除を狙って意図的に融資の持ち込みを怠った時は、買主の立場として契約不履行による損害賠償請求を受ける可能性があります。

4.売主の契約違反による解除

契約で約束したことを行わないことを「債務不履行」といい、売主・買主は、互いに相手側に対し、契約上の義務を履行しなかった時には「債務不履行責任」を負うことになります。もし、売主が約束した期日までに建物を引き渡さない場合は、買主は契約を解除して違約金を請求することが可能です。なお、軽微な債務不履行に関しては契約解除できませんが、損害が生じているときは損害賠償を請求できます。            

5.契約不適合(売主の担保責任)による解除

売買契約において、引き渡された目的物が、種類や品質、数量に関して契約の内容に適合しないことを「契約不適合」といいます。例えば、引き渡された後、土地の土壌が汚染されていたり、建物の土台がシロアリの被害を受けていたりしたことが判明した場合です。
2020年4月1日に施行させれた改正民法により、これまでの「瑕疵担保責任」が廃止され、新しく「契約不適合責任」が制定されました。瑕疵担保責任では修補請求は認められず、解除することができるのも、瑕疵(欠陥)によって契約の目的を達成することができない場合に限定されていました。契約不適合責任においては、引き渡された土地や建物に欠陥が見つかった場合に欠陥の修補を請求できるようになり、契約の解除は、目的を達成できない場合に限定されず、修補請求に対し売主が対応しない場合、売主に相当の期間を定めて催告をしても期間内に売主の義務が履行されなければ、契約の解除ができるようになりました。

契約不適合責任においては、売却される目的物が契約内容に適合しているかが問われ、適合しない場合の買主側から売主側への請求権の範囲がより広くなります。さらに、売買対象不動産に問題があった場合の契約解除の要件緩和など、買主側の救済手段が増えている為、買主にとっては、より一層安心して不動産を購入できるようになりました。

6.誤認・困惑による契約の取り消し

消費者個人と事業者(一般の会社、団体など)の間で締結された契約(消費者契約)には消費者契約法が定められており、不動産取引においても適用されます。事業者の「不当な勧誘」により、消費者を「誤認」や「困惑」させて契約させることは不当行為となり取消が可能です。

不当な勧誘
誤認 1.不実の告知
事実と違うことを告知され、消費者がそれを事実と誤認した場合
2.断定的判断の提供
土地の値段のような将来確実に価値が上がるかどうか判断し難いものについて断定的であるかのような判断を提供した場合
3.故意による不利益事実の不告知
消費者の利益になることは説明しながら、不利益になる部分を意図的に説明せず消費者が誤認した場合
困惑 4.不退去
事業者が消費者の自宅・仕事場などで勧誘しているとき、消費者が相手に退去の旨を示したにもかかわらず、居座って勧誘を続けられて契約をした場合
5.退去妨害または監禁
事業者が勧誘している場所から消費者が退去したい旨を示したにもかかわらず、帰らせてもらえず、勧誘を続けられて契約をした場合

 

7.詐欺・強迫による契約の取り消し

事業者の詐欺や脅迫による契約は取消を主張できる場合があります。弁護士など法律の専門家に相談をします。

  詐欺 強迫
意味 だまされて意思表示(契約)すること おどされて意思表示(契約)すること
当事者間の効果 だまされた者は契約を取り消すことができる 強迫された者は契約を取り消すことができる
第三者との関係 善意の第三者には取り消しを主張できない
※詐欺された者より善意の第三者を保護するため
善意の第三者にも取り消しを主張できる
※強迫をされた者を保護するため

 

8.合意解除(話し合いによる解除)

契約の定めによらず、当事者間の話し合いで契約を解除することを合意解除といいます。解除できるかどうかは交渉次第となり、相手方の同意が得られるよう条件を決めます。合意が成立したら、その内容を書面にしておきます。

 

契約解除時の仲介手数料について

「クーリング・オフによる解除」や「解約条件特約による解除」の場合は、仲介業者へ手数料を払う必要はありません。もし支払い済の場合は返却してもらえます。
「手付解除」、「契約違反による解除」、「契約不適合(売主の担保責任)による解除」の場合は、仲介業者に責任がない限り仲介手数料を支払います。「誤認・困惑」や「詐欺・脅迫」の場合は、売主の不動産会社に原因があることが多く、その場合は手数料の支払い義務はありません。合意解除の場合は、解除の原因に媒介責任がなければ、仲介業者より手数料の請求が可能です。

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