中古住宅を安心して買えるインスペクション(建物状況調査)とは

これまで日本ではマイホーム購入と言えば「新築」という考え方が一般的でしたが、近年は中古物件の注目度が上がり需要も増えています。例えば、首都圏の中古マンションの成約数が新築マンションの成約数を上回ったり、中古戸建の取引件数が前年を上回ったりしています。その要因としては、新築マンション用の土地が少なくなり、新築マーケットが高騰したことで中古物件にユーザーが流れたことや、コロナの影響による生活環境(テレワークなど)の変化から住み替えが増えたことなどが考えられます。やはり、同じ条件で新築と中古の戸建物件の相場を比べると一般的に中古物件の方が安くなるため、同じ購入希望価格でも、中古物件ならば駅近などの好条件の物件が手に入れやすくなります。

こうして中古物件への需要が高まりを見せる一方で、品質や状態に対する不安感や中古に対する悪いイメージなど、中古物件に対して抵抗感を感じる人はいると思います。実際、住むために大規模なリフォームを必要とするような中古住宅もありますが、中には新築時にハイグレードな仕様で建てられた中古住宅もあり、掘り出し物に出会えるチャンスもあります。最近は専門家が既存住宅(中古住宅)のインスペクション(建物状況調査)を入れ始めていて、しっかり品質が確認された中古住宅が市場に増え始めており、今後、中古住宅市場が活性化するものと予想されています。

建物状況調査(インスペクション)とは

既存住宅(中古住宅)の基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の有無を目視、計測等により調査するものです。建物状況調査は国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が実施します。

専門家による目視検査を行うことにより中古住宅の劣化状況を把握できた上で売買等の不動産取引を行うことができるので、購入後の補修費用のトラブルのリスクヘッジになるというメリットがあるほか、リフォーム・メンテナンスの計画に活用できるという一面もあります。

なお、建物状況調査の結果、一定の基準を満たす場合には「既存住宅売買瑕疵保険」に加入することができます。

建物状況調査の検査対象

  1. 「構造耐力上主要な部分」に係る調査対象部位の例

    基礎、土台および床組、床、柱および梁、外壁および軒裏、バルコニー、内壁、天井、小屋組

  2. 「雨水の浸入を防止する部分」に係る調査対象部位の例

    外壁、内壁、天井、屋根

※目視検査の為、外から見えない劣化や不具合を把握し、住宅の性能を判定するものではありません

建物状況調査は任意であり、既存住宅の売買で必ず実施しなければならないものではありませんが、調査をすることで次のようなメリットがあります。

建物状況調査のメリット

 ①引き渡し後のトラブル回避

  専門家の調査により建物の状況が把握でき、より安心して購入の判断をすることができる

 ②メンテナンスの見通しが立てやすい

  購入後のリフォームやメンテナンス等の予定を見込んだ取引が可能となる

 ③競合物件との差別化

  調査していない他の売却物件より不動産サイトなどで選ばれやすくなる

 ④既存住宅売買瑕疵保険への加入

  劣化・不具合等が無いなど一定の条件を満たせば加入が可能
  (※加入のための検査の有効期限は1年)

検査にかかる時間・費用

調査時間は住宅の種類や規模にもよりますが約2~3時間程度で、現在居住中の住宅でも実施することは可能です。調査費用に関しては各調査実施者により異なりますが、平均的には5~10万円程度が相場と言われます。

建物状況調査の斡旋の義務化

既存住宅(中古住宅)の売買時に建物状況調査(インスペクション)が活用されるようにするため、2018年4月1日に宅建業法が改正されました。これにより、宅地建物取引業者は既存住宅(中古住宅)の売買の際、売主買主へ建物状況調査制度の説明と、希望に応じた斡旋を行うことが義務となります。あくまでも<斡旋>の義務であり、<実施>の義務ではありません。

宅建業法の改正ポイント

1)媒介契約締結時、売主に既存住宅状況調査を実施する者の斡旋に関する書面を交付する

2)重要事項説明時、買主に既存住宅状況調査の実施結果の概要を説明する

3)売買契約締結時、売主、買主が建物状況について確認した事項を記載した書面を交付する

ホームインスペクション(住宅診断)とは

専門知識を持つプロの検査員(ホームインスペクター【住宅診断士】)が建物の基礎・外壁などにひび割れや破損、雨漏りしないかなど建物の劣化状況を、目視および計測等による非破壊検査にて詳細を確認し、アドバイスを行う専門業務です。
日本では聞きなれないワードですが、米国では既存住宅の売買取引においてホームインスペクションは既に常識となっています。欠陥住宅の問題が浮き彫りになることが多い昨今、日本でも重要度が増してきています。

宅建業法の「建物状況調査」との違い

「ホームインスペクション(住宅診断)」は【住宅に施す検査全般】のことを指しており、各業者ごとに検査の内容や基準が異なります。「建物状況調査」は【宅建業法において定められた基準に基づいた検査】のことを指しており、国土交通省の定める講習を修了した建築士が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するために、宅建業法において明確に定められた基準や資格に基づいて調査が行われます。

また、ホームインスペクションには様々な名称があり、それらの内容が宅建業法に基づく建物状況調査と同じ要件を満たしているかどうかは、各サービス提供者に確認する必要があります。

宅地建物取引業法に規定する建物状況調査以外の調査だったとしても、調査において瑕疵が発見される等、取引の相手方等の判断に重大な影響を及ぼす調査結果であった場合は、故意に説明をしないと宅建業法違反に問われる場合があります。

住宅性能表示制度とは

住宅性能表示制度とは、新築・中古住宅の性能を専門家が評価して、客観的な数値で分かりやすく表示する制度のことです。以前は性能の基準がまとめられていなかったため、異なる建築会社間で住宅を比較して性能を判断することが困難でした。そこで、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、国に登録した専門機関の評価員が、共通の評価方法で性能を確認する「住宅性能表示制度」が施行され、その評価の結果は「住宅性能評価書」として交付されます。

新築住宅の住宅性能評価書には『設計住宅性能評価書』と『建設住宅性能評価書」の2種類があります。『設計住宅性能評価書』は施主の希望通りに設計されているかを設計図書などの評価をもとに交付されます。『建設住宅性能評価書』は設計図書などの通りに施工されているかを現場検査で施工段階・完成段階に確認し交付されます。もし、竣工後に施工者とトラブルになった場合、国が指定する住宅紛争処理機関に紛争処理を申請する際に2つとも必要となる場合があるので、基本的に2つの評価はワンセットで取得するべきです。

中古住宅の場合は、住宅の劣化状況などを専門家が目視等で評価し『現況検査・評価書(建設住宅性能評価書)』が交付されます。

また、住宅性能評価を受ける費用は新築一戸建ての場合10万円から20万円程度で、希望する場合は「住宅性能評価機関」として国に登録した専門機関に依頼します。

住宅性能評価書を取得するメリット

「住宅性能評価書」の取得は義務ではありませんが、取得することで次のメリットがあります。

  • 注文住宅を建てる場合

    耐震性能や耐火性能、省エネ性能などが希望するレベルになるよう設計・施工されているか専門家にチェックしてもらえる

  • 分譲住宅を買う場合

    客観的な数値から自分の希望する住宅かどうか判断できる。また、統一された基準で評価されているため、異なる建築会社間でも住宅の比較がしやすい

  • 中古住宅を買う場合

    住宅の劣化や不具合の状況を購入前に把握することができ、購入後のリフォームの計画が立てやすくなる

  • 新築・中古住宅の場合

    地震保険料が耐震等級によって最大50%割引になる

ホームインスペクションとの違い

「ホームインスペクション(住宅診断)」が住宅の劣化状況や欠陥部分を探すのに対し、「住宅性能評価」は住宅の設計や施工について優れた部分を数値で評価する診断です。

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