日本全国において、住宅が建てられ人々が生活する場所においても、多かれ少なかれ自然災害の危険性が存在しています。宅地の造成に伴う災害や集中豪雨による河川の氾濫、津波などの自然災害を完全に回避することは困難です。その為、災害の危険性が高い区域については、その危険性をはっきり示し、住人に事前の心構えを持たせて防災効果を高められるようにしています。
家など不動産を販売する時には、災害の危険性がある区域であった場合、契約前の「重要事項説明」にて買主に説明する義務があります。説明する主な項目としては、「造成宅地防災区域」、「津波災害警戒区域」、「土砂災害警戒区域」の3項目です。
造成宅地防災区域
「造成宅地防災区域」とは、宅地造成工事規制区域外の造成宅地で、地震などによって崖崩れ、土砂の流出など、災害が発生する恐れがあるとして、都道府県知事が「宅地造成等規制法」により指定した区域のこと。なお、都内では「造成宅地防災区域」は指定していません。
大規模盛土造成地
宅地造成等規制法では、「造成宅地防災区域」の定義について、「一定規模以上の形状で、計算によって危険と確認できる造成宅地」と、「既に危険な事象が生じている造成宅地」と定めており、このうち「一定規模以上の形状」の造成宅地を「大規模盛土造成地」と呼びます。
大規模盛土造成地の2つの型
- 谷埋め型
谷や沢を埋めて造成された土地(盛土面積が3,000㎡以上) - 腹付け型
傾斜面に沿って盛土造成された土地(盛土をする前の地盤面が水平面に対して20度以上の角度をなし、かつ、盛土の高さが5m以上 )

東京都に造成宅地防災区域は指定されていいませんが、大規模盛土造成地は存在します。
東京都都市整備局によると、東京23区で大規模盛土造成地が無い区は、千代田区、中央区、台東区、墨田区、江東区、荒川区、足立区、葛飾区、江戸川区の9区で、逆に一番多いのは板橋区の29ヵ所です。
東京都大規模盛土造成地マップ
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/takuzou/takuzou_map_r2.html
(東京都都市整備局のサイトが開きます)
宅地の安全を確保するためには
宅地における災害を防ぐためには、宅地の所有者等の皆様が、日頃から自らの宅地や周辺の擁壁・のり面に目を配り、点検しておくことも大切です。
以下のチェックポイントを参考に点検することによって、宅地の被害の前兆となりうる異常を早く発見することができます。もしも、おかしな事象を発見した時は、区市町村や東京都に相談をしましょう。
- 擁壁の長い区間で変状(ハラミ出しや水平亀裂)が見られる
- 擁壁がいつも水のしみ出しにより濡れていて、苔が生えている
- 宅地地盤(道路や側溝を含む)・擁壁の変状が連続している
- 盛土の範囲が特定されている場合、盛土の上端と下端の部分の擁壁などに変状が見られ、湧き水がある
都道府県知事は、災害防止のために必要な措置を講ずるよう土地の所有者に勧告や改善命令、必要であれば立ち入り検査を行います。「防災措置命令」には、擁壁の設置・擁壁改造・地形や盛土の改良工事などがあります。
津波災害警戒区域
「津波災害警戒区域」とは、津波による河川氾濫、内水氾濫など、住民の生命や身体の危険が想定され、警戒避難体制を整備すべき区域として、都道府県知事が津波防災区域づくりに関する法律により指定した区域のこと。
警戒区域等の指定は、あくまでも津波による浸水リスクを表明するものではく、すでに「津波浸水想定区域」で表明された浸水リスク(浸水想定)に対処し、より安全な地域づくりを行うことを示すためのものです。なお、東京都には津波災害警戒区域の指定はありません。
津波災害警戒区域指定の効果
・住民等の防災意識の向上、防災活動への参画
・安全な避難場所の確保
・要配慮者利用施設等における避難確保
・津波に対して安全な地域づくりを進めていることを全国に発信
「津波災害特別警戒区域」とは
津波災害警戒区域の中でも、津波災害により建築物が損壊または浸水し、住民の命や身体に対する著しい危害が想定されるとして、一定の開発行為や建築物の建築、用途の変更を制限するべきと指定された区域のこと。
物件がこの区域にある場合、重要事項説明時に宅建業者より必ず説明があります。
東京都の洪水ハザードマップ
東京都内の各区市町では、都市型水害対策連絡会が公表している浸水予想区域図や東京都又は国土交通省の各河川事務所が公表している洪水浸水想定区域図を基に、洪水ハザードマップを作成しています。このマップにより津波浸水、河川氾濫、内水氾濫の被害が予測される地域が分かります。
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/river/chusho_seibi/index/menu03.html
(東京都建設局のサイトが開きます)
土砂災害警戒区域
「土砂災害警戒区域」とは、土砂災害による住民の生命や身体の危機が想定される区域に関し、都道府県知事が地形、地質、土地利用状況の調査を行い、「土砂災害防止法」により指定する区域のことで、2つのレベルがあります。
土砂災害が発生した場合に、住民の生命または身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で、土砂災害を防止するために警戒避難体制の整備を図ることが義務付けられる
土砂災害が発生した場合に、建築物の損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域。警戒避難体制の整備、特定開発行為の許可制、建築物の構造規制、建築物の移転などの勧告が都道府県知事によってなされる
東京都建設局が公開している資料より、東京23区で警戒区域が一番多い区は「港区」で、イエローゾーン210ヵ所(うちレッドゾーン142ヵ所)です。その他の区については下表をご覧ください。また、警戒区域はおよそ5年ごとに基礎調査を実施し更新されます。
東京都23区の土砂災害警戒区域
(東京都建設局発表:令和3年5月28日現在)
区名(五十音順) | 警戒区域 | うち特別警戒区域 |
---|---|---|
足立区 | 0 | 0 |
荒川区 | 7 | 6 |
板橋区 | 149* | 117 |
江戸川区 | 0 | 0 |
大田区 | 97 | 60 |
葛飾区 | 0 | 0 |
北区 | 95 | 71 |
江東区 | 0 | 0 |
品川区 | 50* | 38 |
渋谷区 | 11 | 9 |
新宿区 | 55 | 38 |
杉並区 | 7 | 6 |
墨田区 | 0 | 0 |
世田谷区 | 100* | 79 |
台東区 | 2* | 1 |
中央区 | 0 | 0 |
千代田区 | 41* | 30 |
豊島区 | 21 | 10 |
中野区 | 20* | 10* |
練馬区 | 15* | 11 |
文京区 | 106* | 64 |
港区 | 210* | 142 |
目黒区 | 25* | 18* |
※この他に、他の区市町村からまたがる指定区域あり
東京都の土砂災害警戒区域等マップ
個別の区域が確認できます。
https://www2.sabomap.jp/tokyo/
(東京都建設局のサイトが開きます)