かつては茶畑が広がっていた松濤
渋谷区松濤は、東急百貨店本店の西側に広がる一帯で、東京を代表する高級住宅街です。
かつては紀州徳川家の下屋敷があり、明治時代に旧佐賀藩主の鍋島家に譲渡されました。
鍋島家がここで茶園を開き、「松濤園」と名付けたことが地名の由来となっています。
その後、果樹園や農場を経て、鍋島家の本邸が築かれます。
本邸周辺の土地は200坪単位で分譲されることになるのですが、購入するためには紹介者が必要だったこともあり、政府の高官や軍の幹部、大企業の重役といった、社会的地位の高い人が集うことになりました。
こうして、現在の落ち着いた住宅街の基礎が形成されたのです。
余談ですが、渋谷駅のシンボル「忠犬ハチ公」の飼い主で、東京大学教授だった上野氏の居宅も松濤1丁目にありました。
都内のどこへでもアクセスが容易
この地域の最寄り駅は京王井の頭線の神泉駅ですが、JRや東急電鉄、東京メトロなどが乗り入れる渋谷駅も徒歩圏内です。
また、渋谷駅周辺は、都内でもバス路線が充実している地域のひとつです。
ですから、移動に困ることはありません。
車で移動することが多い人にとっても、エリアの端には山手通りが走り、首都高速にもアクセスが容易ですから、たいへん便利な場所といえます。
幹線道路への抜け道に使われそうな道もありますが、一方通行になっている道路が多いこともあって、車の往来は少なめです。
駐車場を広く取っている家が多く、大型車も停めることができます。
ショッピングからアートまで幅広い施設が充実
前述の東急百貨店本店をはじめ、渋谷の繁華街にすぐ出られますので、ショッピングで「そろわない物はない」と言い切れる、非常に恵まれた立地となっています。
また、隣接する神山町や神泉町には個人商店の立ち並ぶ商店街があり、日々の買い物にも困りません。
その一方で、大規模なスーパーが地域内にはないため、食料品をまとめて買うときは、やや遠出をする必要があります。
特に買う量が多いときは、自家用車やタクシーで大型スーパーがある池尻や恵比寿方面に出ることになるでしょう。
東京を代表するアートや演劇、音楽の発信地として知られる「Bunkamura」や、区立でありながら意欲的な展示を数多く行う「松濤美術館」をはじめ、陶磁器専門の「戸栗美術館」、映画とアートなどを複合的に楽しめる「UPLINK(アップリンク)」、ライブパフォーマンスが見られる「サラヴァ東京」など、周辺には文化施設が多数あります。
文化面での嗜好を持つ方や、お子様に文化的・芸術的な教育をと考えている人にとっては、たいへんメリットがあります。
しかし、人の往来も多いので、施設近隣に住居を検討する場合には、日中(特に土日)の様子を調べておくことをおすすめします。
また、松濤の周りには飲食店が立ち並んでいることから、平日のランチタイムは多くの人で賑わいますし、夜も遅い時間まで客足は絶えません。
さすがに住宅街の真ん中まで喧騒が響くことはありませんが、夜間に徒歩で移動する場合には、気になることがあるかもしれません。
子育てや教育、安全な生活を送れる街
教育面では公立の場合、渋谷区立神南小学校と渋谷区立松濤中学校に通うことになります。
どちらも子供の足でも時間はかからない距離ですが、繁華街を通る場合もありますので注意が必要です。
電車通学の私立校を選んだときは、駅までの移動をフォローする必要があるでしょう。
遊び場としては、湧水池のある「鍋島松濤公園」(鍋島侯爵邸の跡地)があり、渋谷とは思えないような自然と触れ合うことができます。
また、少し足を延ばせば代々木公園もあります。
ニュージーランドやモンゴルの大使館、東京都知事公館といった公的な施設が多いことも特徴です。
そのため、警察官の姿を目にする機会も多く、高級住宅街といえども犯罪が起きにくいエリアかもしれません。
しかし、一歩、松濤エリアを離れれば、犯罪率の高い渋谷の繁華街がありますので安心してはいけません。
松濤エリアの家は、一軒一軒の敷地が広く、元々台地だったことから壁も高くしてある邸宅がほとんどです。
もちろん、多くの家庭がセキュリティ会社と契約していますし、町内会もWebを通じて情報を共有するなど、昔ながらの地域の目もしっかり機能しています。
「庭がしっかりある大きな家」を探している人には最適の地域といえるでしょう。
渋谷区松濤の不動産事情
「松濤」は東京屈指の高級住宅街として知られています。その不動産事情には以下のような特徴があります。
1. 第一種低層住居専用地域に指定されており、建物の高さや用途に厳しい制限があります。
2. 松濤1・2丁目、神山町では200m2以上の敷地面積が必要というルールがあり、広い区画に豪邸が建ち並んでいます。
3. マンションは主に低層で高級感のあるものが多く、3階以下・20戸程度が基本となっています。
4. 新築マンションの供給はほとんどなく、中古物件でもプレミアム価格がついています。
5. 希少性の高い高級マンションが存在します。例えば
・プラウド松濤一丁目:2011年竣工、全9戸すべてが角部屋という贅沢な設計。
・フォレストテラス松濤:1999年竣工、約900坪の敷地に26戸のみ、200m2以上の住戸も存在。
松濤の不動産市場は非常に競争が激しく物件の供給が少ないため、良質な物件を見つけるのはかなり難しいと言われています。
渋谷区松濤の不動産トレンド
最近では松濤・神山町エリアを中心とするエリアが「奥渋」と呼ばれ注目を集めています。渋谷の喧騒から少し離れ、隠れ家的なレストラン、センスの良いカフェが増え、中目黒や裏原宿に似た洗練された雰囲気があります。
小さなギャラリーや本屋なども点在してクリエイティブな空気も醸し出し、若い世代を惹きつけています。
奥渋エリアの人気上昇に伴い、不動産価値も上昇傾向にあります。例えば、渋谷区松濤の中古戸建ての価格は、2020年時点で232万円/坪となっており、10年前と比べて37.9%上昇。10年後の2030年には、中古戸建ての価格が276万円/坪まで上昇すると予想されています。これは現在の価格から18.8%の上昇を意味し、周辺エリアの平均増加率1.8%を大きく上回っています。
奥渋エリアでは、古い建物をリノベーションする動きも見られます。例えば、築31年の複合ビルをリノベーションした「ARCHES KAMIYAMACHO」が2023年9月にオープンしました。このような取り組みが、エリアの魅力向上と不動産価値の維持・上昇に貢献しています。
奥渋エリアは、渋谷の利便性と高級住宅街の静けさを併せ持つ独特な魅力を有しており、今後も不動産市場において注目を集め続けると予想されます。
このように、松濤は高級住宅街としての価値を保ちつつ、文化的な要素や利便性も兼ね備えた魅力的な地域であることがわかります。
渋谷区松濤の住環境
「松濤」は渋谷駅から徒歩10分という利便性の高さにもかかわらず、静かで落ち着いた住環境が保たれています。
歴史的に政府高官や軍の幹部、大企業の重役など、社会的地位の高い人々が集まってきた地域で、格調高く美しい街並みです。
さらに、文化施設や公園が充実しており、芸術や自然を楽しめる環境が整っています。
もちろん渋谷の繁華街に近いため、ショッピングや交通アクセスに優れ、都会の利便性と高級住宅街の静けさを併せ持つ独特な魅力を有しています。
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