城南・城西エリアが地震に強い理由とは

[記事公開日]:2016/04/19 [最終更新日]:2024/02/05

近年、日本各地で大きな地震が発生し、甚大な被害をもたらしています。これらの地震は、私たちに地震への備えの重要性を改めて示しました。首都直下地震は、いつ発生してもおかしくないと言われており、その規模はマグニチュード7クラスと予想されています。もし首都直下地震が発生すれば、東京23区を中心に甚大な被害が発生する可能性が高いです。そこで、地震の被害を軽減するためには、住む場所選びや住宅の耐震性能が重要な要素となります。

理由1.固い地盤が揺れを抑える

地震による揺れの大きさは地盤の強度に大きく左右され、地盤が強固なエリアであれば地震による揺れが小さく、被害を抑えることができます。

東京の地盤は、山地・丘陵地、山の手の台地と、下町の沖積低地、そして台地を刻む谷からできている谷底低地に分類されます。国土交通省の「東京23区の地盤沈下」によると、東京23区の西側エリアは武蔵野台地と呼ばれる台地の上に位置しており、地盤が強固です。一方、東側エリアは江戸川や荒川などの河川によって堆積した沖積地が多く、地盤が軟弱です。

沖積低地や谷底低地は、地震が起きた場合に揺れが増幅されやすいため、比較的被害が発生しやすい地域です。

東京の地盤分布図

【地盤の特性】

山地・丘陵地、台地

形成された年代が古く、洪積層を中心とした地盤です。団結した地盤のため地震が起きた場合でも揺れが増幅されにくいことから、被害は発生しにくい地域です。

沖積低地

形成された年代が新しく、沖積層を中心とした地盤です。主に海面下での堆積物でできているため軟弱な地盤となっています。地震が起きた場合に揺れが増幅されやすいため比較的被害が発生しやすい地域です。また、液状化も起こりやすい地域です。

谷底低地

台地を刻む谷底での堆積物でできているため軟弱な地盤です。
地震が起きた場合に沖積低地同様、揺れが増幅されやすいことから、比較的被害が発生しやすい地域です。

理由2.固い地盤が液状化を防ぐ

●液状化とは

地表付近の含水状態の砂質土が、地震の震動により固体から液体の性質を示すことで、上部の舗装や構造物などが揚圧力を受け破壊、沈み込みを起こすもの。「流砂」とも呼ばれていた。

●液状化しやすい場所

東京の液状化しやすいエリア

砂丘地帯や三角州、港湾地域の埋め立て地、旧河川跡や池跡や水田跡など、まだ比較的新しく締め固まっていない土地、川や海に近い比較的地盤のゆるい土地に起こりやすいと言われている。

23区の東部(足立区、葛飾区、江戸川区、墨田区、江東区、中央区)及び東京湾岸地域、品川区、板橋区に液状化が発生しやすい地域が多く集まっており、その他西部では「液状化がほとんど発生しない地域」となる。

理由3.巨大津波発生の可能性が低い東京湾

東京湾の過去の津波

東京大学地震研究所元講師の羽鳥氏が江戸中期の元禄関東地震(1703年)、同末期の安政東海地震(1854年)、関東大震災のデータなどを参考にした予測によれば、「首都圏地震の場合の東京湾への津波の高さは1メートルから1.5メートル」とのこと。

羽鳥氏は「東京湾の入り口がすぼまって中が広がる地形で津波のエネルギーを減衰させやすい上、多くの河川が湾に流れ込んでおりパワーを分散させている」と指摘、「首都圏で2メートル以上の津波が起きる可能性は現時点では少ない」と述べている。

【参考】津波高による被害レベル

 ・波高1メートル・・・陸地への影響はほとんどない

 ・波高1.5メートル・・・低地での床下浸水が懸念される

 ・波高4メートル超・・・家屋が全半倒壊する可能性大

産業技術総合研究所活断層・地震研究センターの宍倉正展・海溝型地震履歴研究チーム長は、「元禄地震タイプは2000年以上、関東大震災タイプは200~400年が再来する間隔」と説明。

さらに「安政東海地震のような東海地震は今世紀中に必ず起きると言われているが震源地の関係から東京湾への影響は少ない」としている。

「水深が数十メートルと浅いので津波のエネルギーを減衰する東京湾では神経質に津波を心配する必要はない」とのこと。

東京都「首都直下地震」の被害想定を10年ぶりに見直し

東京都は2022年5月25日、首都直下地震等による東京の被害想定を発表。新たな被害想定では、中央防災会議における見解や発生確率等を踏まえ想定地震を設定しました。

都心南部直下地震では建物の倒壊や火災などで最悪6148人の死者が出ると想定。10年前に出された死者数の想定は約9700人で、およそ6割に減少しました。負傷者は9万3435人、建物の被害は19万4431棟で、これらも10年前のおよそ6割です。被害想定数が減ったのは、建物の耐震化などが10年間で進んだことなどが要因と都は説明しています。

今後は、本報告書を踏まえて地域防災計画を修正し、必要な対策を強力に推進することで、東京の防災力を向上していくとのことです。

マグニチュード7クラスの首都直下地震

  • 都心南部直下地震(M7.3)
  • 多摩東部直下地震(M7.3)
  • 都心東部直下地震(M7.3)
  • 都心西部直下地震(M7.3)
  • 多摩西部直下地震(M7.3)
  •  ⇒発生確率:約70%(上記5地震を含む、南関東地域で発生するM7クラスの地震の発生確率)

  • 立川断層帯地震(M7.4)
  •  ⇒発生確率:0.5~2%

M8~M9クラスの海溝型地震

  • 大正関東地震(M8クラス)
  •  ⇒発生確率:0~6%

  • 南海トラフ巨大地震(M9クラス)
  •  ⇒発生確率:70~80%(M8~M9クラス)

震度分布図

首都直下地震等による東京の被害想定 2.2.3 予想される震度分布
(東京都防災ホームページより)

備えに不安がある場合は住み替えの検討も必要です

地震はいつ発生してもおかしくない現実的な脅威です。しかし、事前にしっかりと備えることで、被害を最小限に抑えることは可能です。地盤の頑丈なエリアや耐震性能の高い住宅への住み替えは、地震への備えとして有効な手段です。住み替えは費用や引っ越しなどの負担もありますが、安心安全な暮らしを守るために検討してみてはいかがでしょうか。


参考:東京都防災ホームページ(外部サイト)

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