東京23区「空き家」の現在地――空き家問題の現状と解決策

近年、日本全国で深刻化する空き家問題。都心である東京も例外ではありません。特に23区では、地方とは異なる独特の課題を抱えています。

東京の空き家、実はとても多いんです

空き家は約90万戸、10軒に1軒が空き家

最近の調査によると、東京都にはおよそ90万戸もの空き家があります。都内の住宅全体の約1割にあたる数で、全国でもトップクラス。「そんなに空き家があるの?」と驚く人も多いかもしれません。

次表は、総務省発表の「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」から抜粋した、全国、東京都、特別区部(23区)、各区ごとの総住宅数と空き家数から算出した空き家率です。

  総住宅数 空き家数 空き家率
全国 65,046,700 9,001,600 13.8%
東京都 8,201,400 896,500 10.9%
23区 5,922,100 646,800 10.9%
千代田区 42,210 5,300 12.6%
中央区 106,070 11,720 11.0%
港区 177,980 24,360 13.7%
新宿区 261,030 29,180 11.2%
文京区 149,710 15,670 10.5%
台東区 147,140 15,390 10.5%
墨田区 174,530 20,500 11.7%
江東区 298,230 26,950 9.0%
品川区 264,650 26,680 10.1%
目黒区 170,580 18,250 10.7%
大田区 451,460 48,880 10.8%
世田谷区 541,000 58,850 10.9%
渋谷区 174,970 19,670 11.2%
中野区 236,250 28,620 12.1%
杉並区 365,470 34,870 9.5%
豊島区 213,800 29,810 13.9%
北区 213,930 25,460 11.9%
荒川区 131,160 16,920 12.9%
板橋区 363,490 42,490 11.7%
練馬区 419,650 39,770 9.5%
足立区 402,630 43,850 10.9%
葛飾区 249,950 29,420 11.8%
江戸川区 366,170 34,130 9.3%

参考:総務省「令和5年(2023年)住宅・土地統計調査」

空き家率による区の色分け

なお、この『空き家』とは、次の内容が含まれています。

区分 内容


賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)
賃貸用の空き家 新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
売却用の空き家 新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
二次的住宅 別荘 週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふだんは人が住んでいない住宅
その他 ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅

とくに、東京の空き家には特徴があって、賃貸マンションの入れ替えなどで一時的に空室になるものが多く、上記の空き家率はこの賃貸の空き家の影響が強く反映されています。

では、持ち主も分かっていて売りに出されている「売却用の空き家」は、全空き家の中でどのくらい占めているのでしょうか。次の表がその割合です。

  総空き家数 売却用の空き家数 売却用の空き家率
全国 9,001,600 326,200 3.6%
東京都 896,500 43,800 4.9%
23区 646,800 32,000 4.9%
千代田区 5,300 850 16.0%
中央区 11,720 340 2.9%
港区 24,360 2,460 10.1%
新宿区 29,180 870 3.0%
文京区 15,670 630 4.0%
台東区 15,390 390 2.5%
墨田区 20,500 1,130 5.5%
江東区 26,950 2,890 10.7%
品川区 26,680 1,050 3.9%
目黒区 18,250 590 3.2%
大田区 48,880 1,630 3.3%
世田谷区 58,850 1,810 3.1%
渋谷区 19,670 1,690 8.6%
中野区 28,620 1,860 6.5%
杉並区 34,870 1,450 4.2%
豊島区 29,810 1,700 5.7%
北区 25,460 3,510 13.8%
荒川区 16,920 760 4.5%
板橋区 42,490 1,350 3.2%
練馬区 39,770 620 1.6%
足立区 43,850 1,820 4.2%
葛飾区 29,420 2,130 7.2%
江戸川区 34,130 430 1.3%
売却用の空き家率による区の色分け

全国平均(3.6%)と比べると、東京都全体(4.9%)、23区(4.9%)ともに高くなります。区ごとでみると、千代田区(16.0%)と港区(10.1%)は23区平均(4.9%)を大きく上回り、逆に下回るのは、中央区(2.9%)、新宿区(3.0%)、台東区(2.5%)が低い割合です。

これらの結果は、各区の不動産市場の特性と密接に関連していると言えます。

なぜ千代田区と港区の割合が高いのか

千代田区や港区は、日本の不動産市場における特別な位置づけにあり、以下の要因が組み合わさって、売却用の空き家の割合が他の区に比べて高くなっていると考えられます。

  • 投資家や富裕層の需要
  • これらの地域は、オフィス街や高級住宅地として知られ、国内外の投資家や富裕層による購入が活発です。そのため、相続などで取得した物件も、自己居住用ではなく、売却して利益を得るという選択肢が一般的になります。

  • 高い資産価値
  • 地価が継続的に上昇しており、売却することで大きな利益が見込めます。このため、空き家のまま放置するよりも、「売却」という手段で資産を最大限に活かそうとする傾向が強いのです。

  • 再開発による建て替え
  • 高層マンションや商業施設への再開発が進んでおり、古い物件は解体・売却されるケースが増えています。

  • 利便性とステータス
  • 交通の便が非常に良く、国際的なビジネスの中心地であることから、需要が常に安定しています。売却する際も買い手が見つかりやすく、市場に出ている期間が比較的短いと考えられます。

なぜ中央区、新宿区、台東区の割合が低いのか

これらの区では、空き家が「売却」以外の形で市場に吸収されやすい特性を持っているため、「売却用」の割合が低くなっていると考えられます。

  • 中央区
  • 銀座や日本橋といった商業地、そして月島・勝どきなどの湾岸エリアにタワーマンションが多く、ファミリー層の居住需要が非常に高いです。空き家になっても、すぐに賃貸や再利用されることが多いため、売却される物件の割合が低くなります。

  • 新宿区
  • ビジネスの中心地であり、賃貸需要が非常に旺盛です。空き家になっても「賃貸用」として活用されるケースが多く、売却を選択する人は相対的に少ないと考えられます。また、歌舞伎町など商業色の強いエリアの物件は、そもそも「居住用」としての売却が主目的ではないため、統計に影響を与えている可能性もあります。

  • 台東区
  • 浅草や上野など観光地として有名であり、長期的な所有者が多い傾向にあります。古くから住んでいる住民が多いため、相続などで空き家になっても、すぐに売却するのではなく、身内で引き継ぐ、または親族が居住するといった選択肢が取られやすいと推測されます。また、古い建物が多く、耐震性の問題などで売却が難しいケースも含まれている可能性があります。

空き家が引き起こす問題

空き家が増えると、こんな困りごとが出てきます。

  • 老朽化した家が倒れたり火事の延焼リスクになる
  • 人が入らないとゴミや草がたまり、景観も悪くなる
  • 管理されていないと不法侵入や防犯の心配が出てくる

また、「管理不全」と認定されると、土地の固定資産税の軽減措置が外れてしまうケースもあります。つまり、放っておくと余計にお金がかかることもあるのです。

法律も変わり、放置がむずかしく

2023年に「空き家対策特別措置法」が改正され、「管理不全空家」という区分が新しくできました。これにより、行政はこれまで以上にスピーディーに指導や改善要請ができるようになっています。所有者にとっては、「そのうちでいいや」と思っていると不利になりやすい状況です。

法制度アップデート:2023年改正「空家法」の要点

  1. 「管理不全空家」の新設
  2. これまでの空家法では、倒壊の危険があるなど、特にひどい状態の「特定空家」に指定されないと、行政による強制的な措置が取りにくかったという課題がありました。

    今回の改正では、”特定空家になるおそれのある空き家”を「管理不全空家」として新たに定義。これにより、問題が深刻化する前の段階から、自治体が所有者に対して助言や指導、さらには勧告を行うことが可能になりました。

  3. 税制上の優遇措置の解除
  4. これまで、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が大幅に軽減されていました。しかし、今回の改正によって、「管理不全空家」として勧告を受けた場合、この特例が適用されなくなります。これにより、固定資産税の負担が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。この措置は、所有者に対し、問題が悪化する前に適切な管理や活用を促す強い動機付けとなります。

  5. 空き家活用のための新たな仕組み
  6. 今回の改正は、単に罰則を強化するだけでなく、空き家をより有効活用するための制度も盛り込まれています。

    • 空家等活用促進区域の創設(空き家の用途変更や建て替えをしやすくして転用を促進)
    • 空家等管理活用支援法人の指定(空き家問題に専門的に取り組む団体への相談や支援を受けやすく)
    • 財産管理人の選任請求権の拡大(所有者不明の空き家でも、管理や処分がより円滑に進められるように)

空き家を「負動産」にしないために

空き家を所有している、あるいは将来所有する可能性がある場合、早めの対策が重要です。

まずは現状把握から

空き家の状態を把握し、リフォームや解体、売却、賃貸など、今後の選択肢を検討しましょう。

専門家への相談

不動産会社や弁護士、司法書士など、専門家の力を借りることで、スムーズに解決策を見つけることができます。

自治体の制度を活用

お住まいの区のウェブサイトなどを確認し、利用できる制度や相談窓口を探してみましょう。

東京都には空き家ワンストップ相談窓口もあり、相続や売却・管理の相談を無料で受け付けています。専門家に早めに相談すれば、思わぬ負担やトラブルを避けられます。

東京23区の空き家は、社会問題であると同時に、活用することで新たな価値を生み出す可能性も秘めています。適切な対策と積極的な活用によって、「負動産」を「不動産」に変えることができるのです。

家探しをしている人にもチャンス

「中古でもいいから、ちょうどいい家を探したい」と思っている人にとって、空き家は実はチャンスにもなります。築年数が古い家は価格が抑えられていることも多く、リノベーション前提で探す人には選択肢が広がります。特に23区内では、利便性の良い場所に眠っている空き家もあるので、掘り出し物に出会える可能性があります。

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