もしも購入した家が事故物件だったら・・・心理的瑕疵の告知について

今や『事故物件住みます芸人』として、あえて事故物件に住んでレポートするお笑い芸人が話題になるように、以前と比べて「事故物件」というワードがネットやテレビで良く聞かれるようになりました。かつて、全国の事故物件を検索できるサイトは一部のマニア向けという感じでしたが、今では一般層にまで知れ渡るサービスへと存在が広がり、「事故物件」はエンタテイメントの新たな一分野として確立されています。
ただ、自分が実際に家を購入したり借りたりする当事者となると話は別で、これをエンタテイメントで済ますことはできません。
通常、不動産の取引の際、宅建業者には心理的瑕疵の告知義務があるため、買主・借主に知らせないまま契約することはありません。しかし、中には不適切な対応で取引を成立させようとする悪い業者もいるかもしれませんので、自己防衛のためにも、心理的瑕疵について内容を理解しておきましょう。

1.心理的瑕疵の定義

契約の判断に重要な影響をおよぼす事項」、つまり、「契約前にその事実を知っていたら契約していたか分からないほど重要な事項」ということ。そしてこれらは、売主から買主への告知義務、仲介業者から買主への説明義務が求められます。

心理的瑕疵として取り扱われるものには「事件事故系」と「嫌悪施設系」があります。

事件事故系【自殺、他殺、変死、死亡事故(転落死)、火災など】

嫌悪施設系【暴力団事務所、火葬場、墓地、下水処理場など】

なお、これらの問題は非常にデリケートであり、「心理的」という言葉のとおり、「瑕疵」と捉えるかどうかは個人差があります。宅建業者に求められる姿勢は、当事者をトラブルに巻き込まないように適切な対応をすることであり、告知義務や説明義務の有無だけで考えて判断することではありません。もし気になる場合は、買主・借主側から心理的瑕疵の有無について聞いてしまうのも一つの方法かもしれません。

2.告知義務の線引き

これまでは、賃貸借契約の場合、事故物件に一度誰かが住めば次の借主には心理的瑕疵の告知義務は無くなるという考え方があり、悪質な業者は、短期間だけ従業員を住まわせて強制的に入居歴を作り、告知義務を無くしてしまうという悪い話もありました。なお、売買契約の場合は、取引金額が大きくトラブルの際の被害額を考慮し、事件や事故に告知義務や説明義務の有無を判断する経過年数や入居歴の明確な線引きはありませんでした。

追記

国土交通省は、心理的瑕疵に関して告知するべきか否かを適切に判断するための基準として、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を2021年10月に策定しました。ガイドラインではおおむね3年間が経過すれば告知不要としています。

また、暴力団事務所のような嫌悪施設の場合は、対象物件から何キロメートル以内というような距離的な線引きがなく、通勤や通学時など生活する上で安全・安心を脅かす恐れがあると考えられれば、告知しなければならないと判断されます。

ちなみに、知らずに心理的瑕疵のある物件に問い合わせをした場合、必ずしも心理的瑕疵の内容について説明される訳ではありません。契約になるかどうか分からない段階で不用意に心理的瑕疵の内容を表に出すことは、売主・貸主の立場を考えれば適切ではないと考えられるからです。

3.宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン

不動産取引の際、人の死が生じた場合の心理的瑕疵の告知の要否、告知の内容について、国土交通省が2021年10月にガイドラインを策定し、一定の判断基準を示しています。これにより、告知すべき事案の説明がされなかったなどトラブルの未然防止に繋がることが期待できます。

ガイドラインの適用範囲

(1)対象とする心理的瑕疵

 ・契約の目的物における殺人、自殺、事故死などの人の死に関する事項について取り扱う

(2)対象とする不動産の範囲

 ・居住用不動産(住宅として用いられる不動産)

 【検討案件】…今後の事例の蓄積により随時ガイドラインを更新
  ・当該建物が取り壊された後の土地の取引
  ・取引対象の不動産外において発生した事案
   (搬送先の病院での死や落下死亡の落下開始地点の取り扱いなど)

告知を要する事案について

(1)殺人、自殺、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合

(2)特殊清掃等を必要とする自然死が発生した場合

   ※通常の自然死のケースでは告知不要

告知について

告知
原則

宅地建物取引業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならない。

告知不要の場合

<賃貸借・売買取引>
①対象不動産において発生した、自然死や日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)
 ※事案発覚からの経過期間の定めなし

<賃貸借取引>
②対象不動産または日常生活において通常使用する必要がある集合住宅の共用部分で発生した①以外の死や、特殊清掃等が行われた①の死が発生し、事案発生(特殊清掃等が行われた場合は発覚)から概ね3年間が経過した後

<賃貸借・売買取引>
③対象不動産の隣接住戸または日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で発生した①以外の死や、特殊清掃等が行われた①の死
 ※事案発覚からの経過期間の定めなし

その他の告知について

告知不要の②、③の場合でも、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は告知の必要あり

告知不要の①~③以外の場合、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告知の必要あり

人の死の発覚から経過した期間や死因に関わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき事情があると認識した場合等は告知の必要あり

告知の際、事案の発生時期(特殊清掃等が行われた場合は発覚時期)、場所、死因及び特殊清掃等が行われた場合はその旨を告げる

告知に当たっての留意事項

告知に当たってはプライバシー配慮の観点から、氏名、年齢、住所、家族構成や具体的な死の態様、発見状況等を告げる必要はない。

告知に当たっては、後日のトラブル防止の観点から、取引に当たって、買主・借主の意向を十分に把握し、人の死に関する事案の存在を重要視することを認識した場合には、特に慎重に対応することが望ましい。

注意

このガイドラインは、あくまでも現時点で妥当と考えられる一般的な基準であり、社会情勢や人々の意識の変化に応じて、適時に見直しを行うこととする

 

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