相続税の節税対策
相続税の負担を軽減する方法として、主に次のような方法が考えられます。
- (1)生前贈与
- 暦年贈与(110万円非課税)
- 教育資金の一括贈与(1,500万円まで非課税)
- 結婚・子育て資金の一括贈与(1,000万円まで非課税)
- 相続時精算課税制度(2,500万円まで非課税)
- 住宅取得等資金贈与の特例(最大1,000万円まで非課税)
 
- (2)小規模宅地等の特例「二世帯住宅」「賃貸併用住宅」
- (3)生命保険の非課税枠
- (4)養子縁組
- (5)マンション購入
(1)生前贈与
相続が起こる前に贈与で資産を減らしておくことで、相続財産が減り相続税の負担が小さくなります。ただし、贈与の場合も一定の額以上で贈与税という税金がかかります。ただし、贈与税には様々な目的に応じた控除枠が用意されており、相続税を支払うよりも税金の負担を軽くすることが可能です。
代表的な贈与に関する特例には、①暦年贈与、②教育資金の一括贈与、③結婚・子育て資金の一括贈与、④相続時精算課税制度、⑤住宅取得等資金贈与の特例などがあります。
①「暦年贈与」(110万円非課税)
1年間で基礎控除の110万円以下ならば受け取ったお金に税金がかからないので、数年間かけて小額ずつ贈与してもらう方法です。例えば、1000万円の贈与を受けるのに10年間かけて100万円ずつ貰えば税金がかかりません。このように、コツコツと継続することで大きな節税効果が期待できる制度です。
なお、110万円は一人の受贈者が受け取れる限度額であり、贈与者にとっては、贈与する相手が多ければ多いほど、非課税で移転できる財産の総額を増やすことができます。
②「教育資金の一括贈与」(1,500万円まで非課税)
孫などに教育資金を一括で渡す際に使える特例(信託口座を利用)です。※適用期限あり
| 贈与を受ける人 | 30歳未満の子や孫 | 
|---|---|
| 特例の主な条件 | 教育資金に充てるためのお金など ※学校などに支払われる入学金、授業料、給食費などのほか、学習塾や家庭教師、習い事にかかる費用なども含む | 
| 非課税限度額 | 1,500万円(家庭教師や習い事への支払いは500万円が上限) | 
| 贈与の手段 | 金融機関に受け取る人の名義で教育資金口座を作り、お金を出し入れする ※受贈者が30歳を迎える口座契約終了までに全額を使い切らないと、残額に贈与税がかかります | 
信託銀行や証券会社に専用の口座を作り、贈与する財産を預け、それを教育費として使う場合に金融機関から払い出しを受けます。なお、教育費を払い出してもらうには領収書が必要です。
注意点として、孫が30歳になった時点で使い残しがあると、残金は贈与税の課税対象になります。また、2016年からは留学費用にも使うことが可能になりました。
もちろん、「教育資金贈与の特例」を使わなくても、孫の授業料や入学金が必要になるたびに祖父母が小出しに負担してあげれば税金はかかりません(暦年贈与)。ただ、まとめて学費を渡しておきたい場合や、自分が死んだ後も教育費の面倒を見てあげたいという場合は、教育資金贈与の特例を利用した方がいいでしょう。
③「結婚・子育て資金の一括贈与」(1,000万円まで非課税)
親・祖父母から子・孫に対して結婚や出産、育児の資金として贈与した分については、最大1,000万円(結婚資金は300万円)まで非課税になる制度です。※適用期限あり
| 贈与を受ける人 | 18歳以上50歳未満の子や孫 | 
|---|---|
| 特例の主な条件 | 結婚、出産、育児に充てるためのお金など ※結婚式・披露宴の費用、新居の住居費や引越し代、子供の医療費や保育料などを含む。ベビー用品の購入費などは対象外 | 
| 非課税限度額 | 1,000万円 | 
| 贈与の手段 | 金融機関に受け取る人の名義で口座を作り、お金を出し入れする ※受贈者が50歳までに使い切らないと、残額に贈与税がかかります | 
④「相続時精算課税制度」(2,500万円まで非課税)
住宅購入の際なら、資産2500万円を上限に贈与税を支払うことなく贈与できます。ただし、将来相続が発生した時にその分を相続財産として他の財産とまとめて課税する制度です。非課税になるわけではなく課税の先送りですが、将来相続する資産の総額が相続税の基礎控除額内であれば課税はありません。評価額の低いうちに資産(特に土地や株式)を渡すのに有効であったり、相続を待たずに若い世代に資産を移動することができるメリットがあります。
子どもが住宅購入する時に資産を贈与して頭金を増やしてあげれば、ローンの金利負担も軽くなります。例えば、2500万円を金利2%、30年間の住宅ローンで支払うとすると利息の総額は約800万円にもなります。まだ経済力が足りない若い世代に資金を援助することで、住宅購入に対する負担を減らし、若い世代が住宅を手に入れる後押しになります。
⑤住宅取得等資金贈与の特例(最大1,000万円まで非課税)
住宅購入資金として使うために得たお金の一定額が非課税になる制度 ※適用期限あり
| 贈与を受ける人 | その年の1月1日現在18歳以上の直系卑属 | 
|---|---|
| 特例の主な条件 | 新築または取得した家屋の登記簿上の床面積は40㎡以上240㎡以下 | 
| 新耐震基準に適合する住宅 ※昭和57年1月1日以降に建築された住宅は新耐震基準に適合するとみなす | |
| 非課税限度額 | 最大1000万円 (省エネ、耐震またはバリアフリー性能において一定の基準を満たす住宅用家屋) ※上記以外の住宅用家屋の場合は最大500万円 | 
| 贈与の手段 | 銀行口座を通じてお金を受け取った後、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、所轄の税務署に贈与税の申告書などを提出 | 
(2)小規模宅地等の特例「二世帯住宅」「賃貸併用住宅」
小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住していた宅地や事業を営んでいた宅地を相続する場合、一定面積まで土地の評価額を最大80%減額できるできる制度です。
土地の評価額を大幅に下げられるため、相続税額を大きく減らすことができます。特に都市部の自宅など、土地の評価額が高い場合に絶大な効果を発揮します。
ただし、適用には厳しい要件があり、同居している親族であることや、相続税申告期限まで売却しないことなどが求められます。被相続人が老人ホームに入居していたなど、状況によって適用要件が異なるため、専門家への相談が不可欠です。
【二世帯住宅】
二世帯住宅を建てて親と同居すると、その宅地の相続時に「小規模宅地等の特例」が適用され、土地の評価額を80%下げることができます。
その為、課税資産が減少し税金が下がります。もし土地の評価額が1億円なら2,000万円まで減額になります。
【賃貸併用住宅】
賃貸部分にも「小規模宅地等の特例」が適用されます。被相続人が宅地等を賃貸し、相続人が引き続き賃貸事業を行うなら、200㎡の面積を上限とし、評価額を50%減額できます。
また、相続する土地のうち、賃貸として利用している部分に関しては、「貸家建付地(かしやたてつけち)」として一般的に評価額を20%程度減額ができ、併用することで70%減額できる場合があります。
 
	(3)生命保険金の非課税枠
保険料負担者である被保険者が死亡した場合、その死亡保険金は相続財産とは別に「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象になります。
相続人が保険金を受け取る場合に限り、すべての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります。
500万円 × 法定相続人の人数 = 非課税限度額
非課税金額計算上の法定相続人数には、相続を放棄した者も含みますが、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はありません。
死亡保険金の受取人が複数人いる場合、各相続人1人1人に課税される金額は、その相続人が受け取った生命保険金の取得分によって非課税限度額を按分し、受け取った生命保険金からその非課税限度額を引いた金額となります。
【 事 例 】
相続財産17,000万円(各受取額:妻13,000万円、長男2,000万円、長女2,000万円)
 保険金5,000万円、
   	      生命保険契約者(保険料負担者):父、被保険者:父、保険金受取人:妻、長男、長女(受取割合3:1:1)
生命保険の非課税金額:500万円×3人=1,500万円
| 【単位:万円】 | 妻 | 長男 | 長女 | 計 | 
|---|---|---|---|---|
| 相続財産 | 13,000 | 2,000 | 2,000 | 17,000 | 
| 生命保険金 非課税金額 | 3,000 △900 | 1,000 △300 | 1,000 △300 | 3,500 | 
| 債務控除 葬式費用 | △300 △200 | △500 | ||
| 相続財産の合計 | 14,600 | 2,700 | 2,700 | 20,000 | 
この事例では、相続財産を22,000万円から20,000万円に減少できます。
(4)養子縁組
相続税の計算における基礎控除額は、「3,000万円+600万円 × 法定相続人の数」で決まります。養子縁組をすることで法定相続人を増やし、基礎控除額を増やすことができます。
養子については、相続税では実子がいる時は1人、実子がいない時は2人まで実子と同様の取り扱いとなり、生命保険金や死亡退職金の非課税枠(「500万円 × 法定相続人の数」)も増加します。
なお、実子がいる場合は孫と、いない場合は甥や姪と養子縁組を組むパターンが多いですが、結婚していない養子は養親の姓と同じになるため、その影響も予め考えて進めることが大切です。
(5)マンションの購入
相続税対策としてかなり有効なものがマンションの購入です。あくまでも一般的なおおよそのケースですが、購入価格と比べて、相続税評価額は半分程度になります。さらにタワーマンションだと、一般のマンションに比べて土地の持分が少なくなるため、購入価格の15%~30%程度になることがあります。子供がマンションを買う予定があれば、本人名義とせずに親がお金を出して親名義で買うことも一つの手です。
ただし、節税対策としてマンションを購入した場合、将来の値下がりのリスクも考える必要があります。相続税が仮に500万円節税できたとしても、将来売却するときに1000万円値下がりしたのでは有効な対策とは言えません。
また、総務省と国税庁は、価格の割に相続税が安くて済む高層マンションを節税目的で購入する動きに歯止めをかけるため、2017年の税制改正により、2017年以降販売されるタワーマンションの固定資産税が、高層階であるほど上がるように変更。今まで実売価格が高い高層階が下層階と同じ固定資産税という不公平を是正する方向となりました。今後は高層階の物件は税負担が重くなる一方で、低層階を中心に負担が軽くなります。なお、具体的には、20階以上(60メートル超)であることをタワーマンションの基準とし、中層階から1階下がるごとに約 0.26%固定資産税が減税、1階上がることに約0.26%固定資産税が増税になる仕組みです。
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