コロナ過やロシアのウクライナ侵攻など外的要因によるエネルギー高騰や原材料価格の上昇による物価の上昇が世界で起こっています。平均的賃金が大きく上昇している他国と比べ、賃金が30年以上ほとんど変わっていない日本の国民にとっては、他国以上に大きなダメージとして生活に暗い影を落とし始めています。
そこで、将来の資産形成のためのひとつの方法として、「投資」に興味を持つ人が増えています。ただ、投資商品にはさまざまなものがあり、どれを始めたらいいのか分かりにくいです。とくに不動産投資は予算が数百万や数千万円単位となり、億を超えることも少なくありません。失敗した時のリスクを考えると、投資のビギナーにとって不動産投資はかなりハードルが高く感じます。
しかし、今は投資の多様化が進み、REIT(不動産投資信託)、不動産小口化商品のように少額からスタートできる不動産投資もあります。 その中でも、クラウドファンディングの仕組みを利用した「不動産クラウドファンディング」は、数万円単位で出資額を選ぶことができ、自分のペースで運用できるため、ビギナー向けとして注目されています。
- 1.REIT(不動産投資信託)
- REITのメリットとデメリット
- 2.不動産小口化商品
- 不動産小口化商品のメリットとデメリット
- 3.不動産クラウドファンディング
- 不動産クラウドファンディングのメリットとデメリット
1.REIT(不動産投資信託)
不動産が証券化された投資信託の1つで、投資家は「不動産投資法人」を通じて投資を行います。
REIT「リート」は「Real Estate Investment Trust」の頭文字を取ったもので、アメリカ発祥です。日本ではJAPANの“J”を付けて「J-REIT」とも呼ばれます。
不動産投資法人が投資家から集めた資金をもとに複数の不動産に投資して、そこから得られる運用益や売買差益を投資家に分配します。
REITのメリットとデメリット
流動性が高く、株と同様にいつでも売買できる。
1口1万円程度から投資可能。
不動産の運用や煩雑な管理業務はすべてプロ任せ。
一般的には、年利3%~5%程度の高い分配金利回りが期待できる。
株式と同様に景気や不動産市場の影響を受けやすく相場が変動する。
投資法人の倒産や上場廃止のリスクがある。
投資法人の運営状況により分配金の減額リスクがある。
利益は再投資せず分配金として支払うため、複利効果を得られない。
金融機関の融資は受けられない。
現物不動産投資とは違い、節税メリットが少ない。
REITが向いている人とは
- 少額で不動産投資したい人
- 定期的に分配金が欲しい人
- 自由に売買したい人
2.不動産小口化商品
特定の不動産を一口、数万円から数百万円程度に小口化したものを投資商品として販売し、購入した投資家に対して、賃料収入や売却益などの運用益を口数に応じて分配します。
REITとは異なり現物不動産を見て、その保有者になれます。その為、資産を現金などから不動産に移しておく相続節税として活用できます。土地は実勢価格の約8割の路線価、建物は固定資産税評価額で計算するため、現金での相続に比べて節税になるからです。賃貸アパートなどに使っている「貸家建付地」、200平方メートルまでの「小規模宅地」とみなされれば、2000万円で買った小口化不動産の評価が最終的に400万~600万円ほどに下がるケースがあります。

富裕層によるこれまでのタワーマンションの高級住戸取得や地主の賃貸マンション経営などの節税手段は中流層には難しいものでしたが、この小口化不動産であれば、都心の一等地の不動産を1口数百万円から購入することが可能になり、投資家の裾野がはるかに広がります。
なお、不動産小口化商品は、事業主体によって「匿名組合型」と「任意組合型」の2タイプあります。
- 「匿名組合型」:一口、数万円など少額から投資ができ、数か月単位の短期運用が可能
- 「任意組合型」:一口、100万円以上、期間10年以上などの長期運用。相続対策可能
匿名組合型 | 任意組合型 | |
---|---|---|
不動産の所有権 | なし | あり |
配当金の適用税率 | 雑所得 | 不動産所得 |
相続対策 | 不可 | 可 |
運用期間 | 短期~中期 | 中期~長期 |
不動産小口化商品のメリットとデメリット
購入する口数や投資する物件を投資家が決められる。
税務上は現物不動産投資と同様に節税効果が期待できる(任意組合型の場合)。
物件所有者になれて、かつ運用は管理会社に任せられるので管理に手間がかからない。
資産を複数の物件に分けられるため、リスク分散ができる。
運用期間が5年から15年と長く、予定利回りも5%から8%程度期待できる。
融資が使えないので自己資金が必要。
実物不動産と比べて利回りが低くなる傾向がある。
元本保証、賃料収入の保証がない。
投資マンション販売を目的とした見込み顧客集めの広告商品(高利回・短期運用等)もある。
不動産的価値が怪しい商品を購入しないよう注意が必要。
中途解約できない、または可能でも買い取り価格が市場価格より低くなる場合がある。
不動産小口化商品が向いている人とは
- 物件を自分で選んで投資したい人
- 自己資金があり融資の必要ない人
- 物件オーナーになりたいけど管理はしたくない人
- 相続や贈与の節税対策をしたい人
- ローリスクで長期運用したい人
3.不動産クラウドファンディング
クラウドファンディングの仕組みを利用して、不特定多数の投資家から資金を募り、集まった資金を元手に物件を購入・管理を行います。
インターネットで投資ができる新しい不動産投資として注目されており、運用もプロ任せで1口1万円程度の少額からスタートできるため、初心者でも気軽に投資を始めやすいです。ただし、投資である以上リスクは伴います。
投資対象は、タワーマンションや商業・オフィスビル、リノベーション住宅、リゾート開発地などと幅広く、ビギナーのみならず富裕層からも節税対策スキームとして人気があります。不動産小口化商品と同様に不動産クラウドファンディングには「任意組合型」「匿名組合型」があり、相続対策には「任意組合型」を選択します。「任意組合型」の場合、不動産所有権があり不動産として財産評価されるからです。なお、「任意組合型」は不動産所得、「匿名組合型」は雑所得として、いずれも確定申告が必要です。
任意組合型 | 匿名組合型 | |
---|---|---|
契約方式 | 事業者と全ての投資家の間で任意組合契約を結ぶ | 事業者と投資家が個々に匿名組合契約を結ぶ |
不動産の所有権 | 有 | 無 |
不動産登記 | 現物出資型は要・金銭出資型は要しない場合もある | 不要 |
運用 | 投資家は共同事業者として運用に関わる権限有 | 投資家には運用に関わる権限無 |
収益 | 持ち分に応じて投資家に分配 | 出資割合に応じて投資家に分配 |
分配金の税務区分 | 不動産所得 | 雑所得 |
また、資金だけ出して運用は専門家に任せるという形式はREITと似ていますが、次のような違いがあります。
REIT(J-REIT) | 不動産クラウドファンディング |
---|---|
運用する物件を選べない | 運用する物件を選べる |
価格変動リスクがある | 価格変動リスクが少ない |
売買が自由にできる | 契約期間中は解約できない |
不動産クラウドファンディングのメリットとデメリット
1口1万円程度から少額投資できる。
パソコンやスマートフォンから投資が可能。
運用の手間がかからない。
10%以上のような高利回り案件もある。
融資が使えないので自己資金が必要。
数か月から数年の運用期間中は解約できず、短期的な利益を得にくい。
投資上限額がある場合は大きな利益や配当が望みにくい。
人気ですぐに完売してしまうことがある。
運営会社の出資割合が低い場合、出資元本を棄損するリスクがある。
(基本的に、ファンドの損失が発生した場合は、運営会社の出資分(主に5%~30%間)から損失に充てる仕組みのため「優先劣後方式」)
不動産クラウドファンディングが向いている人とは
- 投資の初心者
- 運用はプロに任せて手間をかけたくない人
- ハイリスクハイリターンよりローリスクの投資がしたい人
- 運用期間が終わるまで待てる人