FPに学ぶ不動産投資の3つのリスクへの対策とメリット・デメリット

最近、不動産投資に関する話題を目や耳にするようになり、検討をはじめた方も多いことでしょう。ここでは、不動産投資を検討されている方に向けて、不動産投資に関わる3つのリスクと対策について、税金面や控除なども含めたメリット・デメリットにも触れながら、ファイナンシャル・プランナー(FP)が解説いたします。

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不動産投資のメリット・デメリットと3つのリスク

不動産投資が金融商品への投資と大きく異なるのは、自己資金に加え、借り入れをする(ローンを組む)ことで、小さな元手で大きな取引ができる点です。もちろん、借り入れをしないで物件を購入する方もいますが、やはり、ローンを組んで物件を購入し、「家賃収入と返済金額との差が利益として手元に残る」という形が一般的でしょう。この前提で想定されるリスク3つについてお話ししていきます。

不動産投資のメリット

不動産投資には、次のようなメリットがあります。

  1. レバレッジを効かせた投資ができる
  2. 各種の税制優遇や経費の控除が使える
  3. 相続税対策としても有効
  4. インフレや有事にも強い

1.について、不動産投資(REIT(不動産投資信託)は除く)は現物投資ですので、基本的には大きな資金が必要になります。しかし、ローンを組むことで、少ない手持ち資金でも大きな金額の投資が可能になります。このことをよく「レバレッジ(てこ)を効かせる」といいます。特に、頭金なしでフルローンを組む場合は、レバレッジは非常に大きくなります。
一方、金融商品でも、例えばデリバティブ(先物・オプション)、FX取引(外国為替証拠金取引)、信用取引などはレバレッジが大きいですが、これらはいずれもスーパーリスク商品ともいわれる、損失のリスクが大きい商品でもあります。安定的に一定程度の利回りを期待でき、かつ「レバレッジが大きい」のは不動産投資だけといえます。もちろん、株式の現物投資や投資信託では、レバレッジを効かせることはできません。
2.について、不動産投資には特に、売却時の税金について各種の税制優遇措置がある点も魅力です。加えてこのとき、減価償却費やローンの金利、損害保険料などの費用を控除できるのも見逃せません。金融商品で税制優遇といえば、NISA(少額投資非課税制度)が思い浮かびますが、年間の非課税枠上限は120万円と少額です。
3.について、2015年からの相続税の基礎控除の引き下げ(および税率の一部引き上げ)で、相続税対策としての不動産投資が改めて注目されるようになりました。これは不動産を相続すると、建物の評価額が3割程度下がるからです。特に、2016年2月に日本銀行がマイナス金利政策を導入して以降、金利の低下も相まってアパート経営をはじめる人が増えています。なお金融商品では、相続税対策に向くものは、一時払い終身保険など一部の生命保険を除きほとんどありません。
4.も不動産投資の大きなメリットです。不動産は現物資産のため、インフレに強いといわれています。戦争、紛争といった地政学的リスクにも強いのです。株式も債券も、インフレ時には通常大きく値下がりしますが、不動産をポートフォリオに加えておけばインフレへのリスクヘッジにもなります。

不動産投資のデメリット

不動産投資には、もちろんデメリットもあります。

  1. 流動性(換金性)に劣る
  2. 借り入れをする(ローンを組む)ことになる
  3. 維持コストがかかる

このなかではやはり、1.が重要です。不動産は上場株式などとは異なり、すぐには現金化できないので、生活資金を投入することは厳禁です。また、ローンを組むため利息を払うことや、維持コスト(固定資産税や都市計画税、修繕関連費用など)がかかることもデメリットといえます。

不動産投資の3つのリスクと対策法

不動産投資のメリット・デメリットを理解したところで、今度は不動産投資のリスクを考えてみましょう。主に次の3つが挙げられます。

  1. 物件価格や家賃(賃料)の下落リスク
  2. 空室リスクや物件の管理リスク、賃料滞納リスク
  3. 天災リスク(大地震や風水害、火災等による損害リスク)

まず1.は不動産投資のもっとも大きなリスクです。また2.も重要です。日本は人口減少が続いており、空き家が増加しています。空室リスクは常にあるといえるでしょう。その他に、物件の管理の問題もあります。管理会社が倒産する可能性や、入居者が家賃を滞納することもあるかもしれません。3.は、特に地震リスクについて、日本国内の不動産へ投資を行う以上、避けられないリスクといえます。
では、この3つのリスクに打つ手はないのでしょうか。そんなことはありません。きちんと対策をとりリスクヘッジすれば、不動産投資を成功に導くことができます。詳しく見てみましょう。

1.物件価格や家賃(賃料)の下落リスクへの対策

不動産投資は、ゴール(途中売却やローン完済も含む)も含めて、最終的な利回りが確定します。ですので、最初にきちんとした事業収支計画をたて、長期的なキャッシュフローを確認しておけば、市況低迷による物件価格や賃料の下落には十分対応できます。またローンが返済できなくなることもないでしょう。物件選定やコール戦略の策定にはプロ(不動産業者や税理士など)のサポートも有益です。

2.空室リスクや物件の管理リスク、賃料滞納リスクへの対策

空室リスクは、物件選定時の属性調査(最寄り駅の乗降客数の変化、人口動態、世帯構成、地域特性、周辺の再開発、需給予測等)をしっかり行うことに加え、リフォーム、リノベーションなどで物件の資産価値を上げたり、他の物件と差別化することで十分回避できます。管理リスクについては、実績のある信頼できる会社に管理を委託することで軽減できます。一括借り上げ・家賃保証などがあるサブリースも含め、管理形態も多様化していますので、自分に合った管理会社、管理形態を選びましょう。最後に賃料滞納リスクですが、自らがオーナーとして入居者と面談して属性を確認し、入居者と定期的にコミュニケーションをとることや、家賃保証会社への加入を条件とすることにより軽減できます。またこれにより、事故物件になるリスクも低くなります。

3.天災リスクへの対策

天災リスクへの対策は、まず火災保険(含む地震保険)に加入することが考えられます。この場合、適正な保険金額を設定することが重要です。物件の早め早めの修繕や、地域分散投資もリスク回避に効果的です。なお、事故発生時の保険金受け取り時の課税関係や、損失計上に伴う経理処理も確認しておきましょう。雑損控除や災害減免法についても覚えておきたいものです。

その他のリスクへの対策

その他のリスクとしては、金利上昇リスクが挙げられます。こちらは、当初借入時に将来の金利予測をしっかり行い、また金利タイプの選択を工夫することでリスクを軽減することができます。繰り上げ返済や借り換えも有効な手段となるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。不動産投資にはリスクはつきものですが、リスクを理解しきちんと対策をとれば、リスクを回避して安定的に収益を確保することができます。不動産投資には、株式や債券、投資信託などとは異なる収益特性があるため、マイナス金利政策で金融商品の利回りが低下している現在、不動産投資の需要は高まっています。例えば東京でも、ワンルーム一室であればローンもそれほど大きくならず、無理なくはじめることができます。興味がある方は、はじめてみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

一色 徹太ファイナンシャル・プランナー
22年間日本生命でのファンドマネージャーや法人営業勤務。その後、独立系FPに転身。現在、一色FPオフィス代表として、個人相談や執筆、講演に従事。生命保険をはじめ、DC(確定拠出年金)、債券、ETF、デリバティブ、企業年金に特に精通。

(保有資格)
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券アナリスト、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、1級DCプランナー、DCアドバイザー、管理業務主任者
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ABOUTこの記事をかいた人

22年間日本生命でのファンドマネージャーや法人営業勤務。その後、独立系FPに転身。現在、一色FPオフィス代表として、個人相談や執筆、講演に従事。生命保険をはじめ、DC(確定拠出年金)、債券、ETF、デリバティブ、企業年金に特に精通。
(保有資格) CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券アナリスト、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、1級DCプランナー、DCアドバイザー、管理業務主任者