この記事では、不動産の売却理由に焦点を当て、売却理由が不動産売却に与える影響や、売却理由で嘘をつくことのリスクについて詳しく解説します。さらに、売却理由を上手に伝えるポイントや、買い手にポジティブな印象を与えるためのコツも取り上げます。不動産の売却を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
不動産売却の一般的な理由
不動産を売却する理由は人によってさまざまですが、一般的な理由としては、上記の3つが挙げられます。それぞれ理由を詳しく見ていきましょう。
財産整理のための売却
老後の財産整理の一環として不動産を売却する人が多い傾向にあります。遺産を相続する際は、不動産よりも現金で残した方が相続人も分けやすいためです。
また、不動産は所有しているだけでも固定資産税や維持費などがかかるため、高齢になり維持管理が難しくなったり、老後の生活設計を見直したりする際に不動産を売却する人も少なくありません。
ライフスタイルの変化による売却
結婚や離婚、子どもの独立など家族構成の変化によって住環境の見直しを迫られたり、転勤や転職などによって職場が変わったりなど、ライフスタイルの変化によって不動産の売却を検討する人も多い傾向にあります。
また、近年はリモートワークの普及により住む場所を柔軟に選べることから、郊外への移住を目的に不動産を売却する人も増えています。
投資物件の売却
資産運用の一環として投資物件に注目が集まっており、投資物件の売却が行われることも多いです。投資物件が売却される目的はさまざまですが、市場の動向を見て物件の価値が上昇したタイミングで利益を確定させる目的や、ほかの投資先に資金を移動させる目的などがあります。
そのほか、急に教育費や医療費などまとまったお金が必要になり、売却するケースもあります。
売却の理由が不動産売却に与える影響
影響を受けやすい対象
- 売却成約までの期間
- 売却の価格
財産整理や家族構成の変化による引っ越し、投資目的などの一般的な理由での売却は、成約までの期間や売却価格にマイナスな影響を与える可能性は低いでしょう。
一方で、不動産売却の理由がネガティブな理由の場合は、買い手から敬遠され、成約までの期間が延びたり、希望価格での売却が難しくなったりするケースもあります。以下で、どのような理由が売却に悪影響を与える可能性があるか確認しましょう。
不動産のネガティブな売却理由とは

一般的に不動産売却にネガティブな影響を与えるとされる売却理由は以下のとおりです。
- 事故・事件
- 近所トラブル
- 立地や環境
- 老朽化
- ローン滞納
- 離婚
近隣トラブルを理由とする売却は、成約までの期間が長引いたり、売却価格が相場よりも下がったりするなど、マイナスの影響を受ける傾向があります。また、建物は時間の経過とともに価値が下がるため、売却理由が老朽化の場合、売却価格に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
一方で、立地や環境の条件、または離婚を理由とする売却の場合、不動産そのものに問題がないと捉える人も多いため、必ずしも売却価格や成約期間に悪影響が及ぶとは限りません。
不動産売却の理由で嘘をつくリスク
ネガティブな内容の場合、不動産売却の理由を正直に伝えたくない人もいるかもしれませんが、嘘をつくことにはさまざまなリスクが伴います。また、異なる理由を伝えるだけでなく、「本当の理由を意図的に黙っている」場合も、嘘をつく行為に該当するため注意が必要です。不動産会社と買い手どちらに対しても正しい理由を伝えるようにしましょう。
ここからは、不動産売却の理由で嘘をつくリスクについて解説します。
不動産会社、買い手と信頼関係が築けない
売却理由を偽ることは不動産会社や買い手との信頼関係を損なう大きな原因となります。嘘が発覚した場合、取引が中断されるリスクも考えられるでしょう。
とくに、不動産会社はプロフェッショナルとして顧客との信頼関係を重視します。そのため、嘘が発覚した時点で、買い手だけでなく不動産会社からの信頼も失い、今後のやり取りを断られる可能性があります。
契約不適合責任に問われる可能性がある
売却理由を偽ると、場合によっては契約不適合責任に問われる可能性があります。契約不適合責任とは、売買契約に基づいて引き渡された不動産が契約内容と相違していた場合に、売主が買い手に対して負う法的責任のことです。
とくに、売却後に不動産の瑕疵が発覚した場合、買い手から損害賠償や契約の解除を求められるリスクが高まります。
買い手に必ず伝えるべき「瑕疵(かし)」とは?
不動産の瑕疵とは物件に存在する欠陥や不具合を指し、「物理的瑕疵」「心理的瑕疵」「法律的瑕疵」「環境的瑕疵」の4種類に分類されます。これらの瑕疵は買い手にとって重大な影響を与える可能性があるため、売却時には正確に伝えることが重要です。嘘や隠蔽が発覚すると、損害賠償や契約解除のリスクを伴うため、誠実な対応が求められます。
1.物理的瑕疵
土地や建物自体に欠陥があるケースです。シロアリ被害や雨漏り、地盤沈下、土壌汚染、地中埋設物などが挙げられます。
2.心理的瑕疵
心理的に不安や嫌悪感を与える欠陥があるケースです。過去に自殺や殺人事件、事故死などがあった場合などが挙げられます。
3.法律的瑕疵
法令等により不動産の自由な使用が阻害されるケースです。消防法や建築基準法、都市計画法に違反している場合などが挙げられます。
4.環境的瑕疵
不動産そのものに欠陥はないものの周辺環境に問題があるケースです。近くに産業廃棄物処理施設や反社会勢力の事務所、火葬場がある場合などが挙げられます。
売却理由を上手に伝えるポイント

不動産の売却理由を偽るのは避けるべきですが、ネガティブな売却理由をそのまま買い手に伝えてしまうと、購入意欲を削いでしまう可能性があります。ここでは、不動産の売却理由を上手に伝えるポイントを解説します。
誠実さを示す
不動産の売却理由を伝える際は、誠実さを示すことが大切です。たとえ売却理由がネガティブなものであっても、誠意を持って説明することで買い手からの理解も得やすくなります。買い手から質問を受けたら曖昧な回答をせずに正直に伝えましょう。
また、誠実さを示すためには正直に理由を伝えるだけでなく、具体的な状況を共有した上で対処方法も併せて提示することが大切です。
ポジティブ情報と一緒に伝える
ネガティブな売却理由であっても、ポジティブ情報と一緒に伝えることで買い手の不安や懸念を最小限に抑えることができます。
たとえば、「家の立地がよい」「周辺の環境が整っている」などと物件の魅力を強調することで、売却理由によるマイナスイメージを和らげることができます。また、最近行ったリフォームや設備の改善点について具体的に説明することで、物件の価値をアピールできます。
瑕疵がある場合、対処法もあわせて伝える
不動産に瑕疵がある場合は、解決策もあわせて伝えるようにしましょう。たとえば、線路に面していて騒音被害がある場合は「二重窓にすれば防げる」、周辺に嫌悪施設がある場合は「裏道を使えば避けて通れる」具体的な対処法を提示することで買い手の安心感を高めることができます。
瑕疵そのものを改善できなくても、対応策を提示することで買い手の不安を軽減し、購入意欲の低下を防ぐ効果が期待できます。
査定時に不動産会社に相談する
不動産の売却理由の伝え方で悩む人は少なくありません。売却理由をどう伝えるべきか悩んだ場合は、不動産会社に相談するのも1つの手です。不動産会社は不動産売却の専門家として豊富な知識と経験を持っているため、適切なアドバイスを受けることができます。
査定時に不動産会社に売却理由について相談しておくことで、売却活動をスムーズに進められる可能性が高まるでしょう。
ネガティブな売却理由の伝え方

ここからは、ネガティブな売却理由の伝え方例をケース別に紹介します。なお、「4つの不動産の瑕疵」については必ず買い手に伝える必要があるため、事前に不動産会社と打ち合わせをしておきましょう。
「離婚」が理由の場合の伝え方
離婚を理由に売却する場合は、プライベートな問題を詳細に語る必要はありません。「家庭の事情により、物件を手放すことにしました」といった簡潔な表現で十分です。
離婚が理由であれば不動産自体には問題がないため、相手に不信感を与えないようにすることが重要です。個人的な事情はぼかしつつ、誠実な態度を示すことで、信頼を損なわずスムーズに取引できます。
「近所トラブル」が理由の場合の伝え方
近所トラブルが原因で売却を考えている場合は、直接的に理由を伝えるのは避け、「新しい生活環境を求めているため売却を考えています」といった、前向きな表現で伝えるようにしましょう。
ただし、トラブルの内容によっては「環境的瑕疵」に該当する可能性もあるため、判断に迷った際は不動産会社に相談することをおすすめします。
「事故・事件」が理由の場合の伝え方
事故・事件は「心理的瑕疵」に該当するため、事実を隠すことなく伝える必要があります。ただし、単に事実を伝えるのではなく、「以前、物件で事故がありましたが、その後適切な対応を行いました」といったように、問題が解決済みであることもあわせて伝えましょう。
もし説明が難しいようであれば、不動産会社に代弁してもらうのも1つの手です。
「立地・環境の問題」が理由の場合の伝え方
立地・環境の問題が理由で売却する場合は、基本的には正直に伝えつつ、「生活スタイルの変化に伴い、より適した場所を探しています」といったように、ライフスタイルの変化を強調した伝え方をしましょう。
個人的にはネガティブに感じる問題も、言い方を工夫することでポジティブに伝えることができます。ただし、「環境的瑕疵」に該当する問題は正直に伝える必要があるため、事前に不動産会社に相談しておくことをおすすめします。
「ローンの滞納」が理由の場合の伝え方
ローンの滞納が理由で売却する場合は、離婚と同様にストレートに伝える必要はありません。「財政的な見直しを行うため、資産整理を進めています」といった前向き表現で伝えることがポイントです。
買い手の中には縁起を気にする人も少なくないため、滞納や経済的な困難に関する直接的な言及は避けたほうがよいでしょう。
「老朽化」が理由の場合の伝え方
老朽化が理由で売却する場合は、「新しい物件への移行を考えています」といった未来志向の理由を述べつつ、基本的には正直に伝えることをおすすめします。
老朽化は、単に築年数だけの問題であれば特に説明の必要はありませんが、「物理的瑕疵」がある場合は必ず伝える必要があります。建物の耐久工事予定など、プラスの情報があればセットで伝えましょう。
不動産の売却理由に関してよくある質問
Q. 買ったばかりの家を売る理由にはどのようなものが多い?
A.買ったばかりの家を売る理由として多いのは、「物件が住みづらかった」「住宅ローンが払えない」「ライフスタイルの変化があった」「近隣トラブルがあった」などが挙げられます。
Q. 不動産の売却理由は正直に伝えるべき?
A.不動産そのものや周辺環境の問題が理由で売却する場合は正直に伝えることが重要です。ただし、離婚や経済的な理由といった、不動産に直接関係ない理由に関しては全てを正直に伝える必要はありません。なお、「4つの不動産の瑕疵」に該当する場合は、必ず不動産会社にも買い手にも正直に伝えましょう。
不動産の売却理由で困ったときは不動産会社に相談しよう
不動産を売却する理由は人によってさまざまです。ネガティブな理由の場合、成約までの期間や売却価格に影響を及ぼす可能性があります。ただし、マイナスな理由で合っても不動産売却の理由で嘘をつくことはリスクがあるため、売却理由の伝え方で迷う場合は不動産会社に相談しましょう。
東京都の不動産購入・売却・売買の相談に関しては、住建ハウジングを利用するのがおすすめです。地域の市場動向や適正価格を把握した専門家から、有益なアドバイスを受けることができます。お問い合わせや詳細については、下記のリンク先から公式ホームページをご確認ください。不動産売却に関するさまざまな情報発信も行っています。
60秒でカンタン!問い合わせ【無料査定】
査定対象は東京都心部のみとなります
投稿者プロフィール

- 監修者
-
宅地建物取引士、管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士
1996年より大手不動産デベロッパー勤務。首都圏の新築マンション販売のプロジェクトマネージャーに従事。多くの物件の担当し、引き渡しまで一気通貫で経験。
その後ベンチャー系広告代理店にて不動産系クライアントのインターネット集客の支援を行う。
現在は広告代理業と併せ、老舗不動産会社として地域ニーズに合わせた事業を展開。20年以上にわたり住建ハウジングと共同でマーケティング活動を行う。