1.防火地域、準防火地域とは
建築可能な建物の用途により地域を分ける用途地域があるのに対し、住民の安全面に配慮した防火、防災による地域区分があります。都市計画法において「市街地における火災の危険を防除するため定める地域」として指定されるエリアです。都市機能が集中している地域や主要幹線道路沿いなど、人のたくさん集まるような大規模商業施設や建物が密集するエリアでは、火災や延焼による惨事を防ぐため、建物の構造に厳しい制限が求められる『防火地域』が指定されます。防火地域よりもやや規制を緩くしたのが『準防火地域』で、防火地域周辺の商業地域や業務地区、居住地区などに指定されます。これら二つの地域でも、一定の条件をクリアすれば木造建築物が建築可能です。
また、防火地域や準防火地域に指定されていない区域には『屋根不燃区域(法22条区域)』が行政により指定されていることがあり、屋根・外壁などで延焼のおそれのある部分に不燃材の仕様を義務付けられています。この制限は第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域などに見受けられます。

さらに、木造住宅が密集する東京都には『新たな防火規制区域』の指定があります。建築物の不燃化を促進し木造密集地域の再生産を防止するために、東京都建築安全条例を改正して、知事が指定する災害時の危険性が高い地域について、建築物の耐火性能を強化することを目的とします。なお、この条例は新しいため、建築後に変更があった場所では、以前と同じ条件で建築できなくなっている可能性があります。建て替えなどの際は事前に変更がないか確認した方が良いでしょう。
自分が住む地域やこれから移転を考えている地域がどの規定地域か調べるには、各自治体のホームページ等で公開されていますので、インターネットで確認することが可能です。
2.各地域・区域の建築規制
建築物は火に対する強さにより次のように分類することができます。

建築基準法では火災により建物が倒壊することがないように、火災に対する防火措置を施さないまま木造等で建設することを制限するため、各地域・区域において規模または用途に応じて、『耐火建築物』、『準耐火建築物』としなければならないと規定しています。
それぞれのエリアにおいて建築可能な建物は下図のように制限されます。
3.耐火建築物と準耐火建築物の違い
耐火建築物 |
主要構造部が鉄筋コンクリート造や耐火被膜した鉄骨造などの耐火構造であるもの、または耐火性能検証法等により火災が終了するまで耐えられることが確認されたもので、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火窓や防火ドア、防火ダンパー付き換気扇にすることなど防火設備を有する建築物のこと 通常の火災による火熱が所定時間加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶解、破壊その他の損傷を生じないもの(消火後も状態を維持する) |
準耐火建築物 |
耐火被膜した木造住宅など、主要部分が耐火構造ほどではないが一定基準に適合する準耐火構造またはそれと同等の準耐火性能を有するもので、外壁の開口部は耐火建築物と同様に延焼のおそれのある部分に防火設備を有する建築物のこと 通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後所定時間構造耐力上支障のある変形、溶解、破壊その他の損傷を生じないもの(一定時間後は燃え尽きる) |
「耐火建築物」、「準耐火建築物」は建物の耐火構造の違いにより分けられます。 準耐火建築物は耐火建築物ほどの条件を満たしていないが、それに準ずる耐火性能を持ち、耐火建築物が最大3時間火災による倒壊を防げるのに対し、準耐火建築物は最大1時間となります。
建築基準法では、耐火建築物と準耐火建築物それぞれ部位ごとに最上階からの階数によって所定時間の耐火構造が定められており、屋根や階段については階数によらず30分の耐火構造が必要とされます。
構造耐力上支障のある変形、溶解、破壊その他の損傷を生じない時間
a.「耐火性能」の部位別の必要性能
部位 | 最上階、最上階からの階数2以上4以内 | 最上階からの階数5以上14以内 | 最上階からの階数15以上 |
---|---|---|---|
間仕切壁 (耐力壁) |
1時間 | 2時間 | 2時間 |
外壁 (耐力壁) |
1時間 | 2時間 | 2時間 |
柱 | 1時間 | 2時間 | 3時間 |
床 | 1時間 | 2時間 | 2時間 |
はり | 1時間 | 2時間 | 3時間 |
屋根 | 30分間 | 30分間 | 30分間 |
階段 | 30分間 | 30分間 | 30分間 |
b.「準耐火性能」の部位別の必要性能
間仕切壁(耐力壁) | 45分 |
外壁(耐力壁) | 45分 |
柱 | 45分 |
床 | 45分 |
はり | 45分 |
屋根(軒裏以外) | 30分 |
階段 | 30分 |
4.防火地域で木造住宅を建てるメリット
高度な耐火性能を要する防火地域でも、一定条件をクリアすれば木造住宅を建てることは可能です。一般的に、木造建築を選択することで以下のようなメリットがあります。
1)建築費用が安くなる
RC造や鉄骨造に比べてコストが抑えられる
2)工期が短くなる
移転までの猶予があまりないなど厳しいスケジュールに対応しやすい
3)大型重機の必要がなく比較的狭い場所でも建築が可能
建物が密集する防火地域に対応しやすい
4)設計の自由度が高い
希望の建物が建てやすく、リフォームも容易になる
5)木造でも耐火建築物なら火に強い
木は表面が燃えて炭化すると中が守られ倒壊しづらくなる
6)木造でも耐火構造ならば火災保険料が安くなる
耐火建築物には様々な割引が用意されている