目的で変わる土地の価格

 土地の価格を表す際、「実勢価格」、「公示地価」、「基準地価」、「路線価」などと場面によって使われる表現が異なり、同じ場所を指す価格でありながら、それぞれ金額が異なります。ここでは、それぞれの意味や役割についてポイントをまとめました。

(1)土地価格の基本「公示地価」

 毎年1月1日時点における土地の価格を、国土交通省の土地鑑定委員会が「地価公示法」に基づいて、その年の3月に公表する「地価公示」があります。ここで発表された「公示地価」が土地の基本的な価格となり、土地取引の目安とされます。

(2)土地の値段の決め方

 公示対象の標準地を評価するのは、土地鑑定士の仕事です。まず、2人以上の不動産鑑定士が評価員として、それぞれ別々に標準地とその周辺の土地の取引事例や収益の見通しなどを調査・分析し、標準地の鑑定評価を行い、更地としての1平方メートルあたりの価格を算出します。こうして得られた地価や土地取引にまつわる情報を土地鑑定委員会に報告し、最終的な公示価格が決定されます。

(3)基準地価や路線価との違い

 土地の価格を表すものとして、公示地価のほかに「基準地価」と「路線価」があります。基準地価は「都道府県基準値標準価格」が正式名称です。毎年7月1日時点の土地の標準価格を各都道府県が公表します。地価公示の半年後の評価であり、地価の変動を補完する役割も担っているといえます。

 一方、路線価は課税のための評価基準です。「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の二つがあり、前者は国税庁が、後者は全国の市町村(東京23区は東京都)が実施機関です。相続税路線価は公示価格の8割程度、固定資産税路線価は公示価格の7割程度をめどとしています。つまり、公示地価が土地の価格を評価する最上位の基準です。

いろいろな土地の値段

(4)実勢価格とは?

 「実勢価格」は、実際に売り買いが成立した価格のことです。どうしても手に入れたいからと公示地価より高く買われたり、早く売りたいからと公示地価より安く売られたりと、売主および買主の事情がからんでいます。

(5)土地の値段はなぜ上がる?

 世の中にお金が回り始めて経済が活発になると、「この先、景気が上向きそうだ」と人々が期待し始めることがひとつの要因です。景気が良くなると、個人では大きな家を買ったり、会社の場合は立派なオフィスに移転したりするなど不動産売買の機会が増えます。このように建物の需要が高まれば、建物を建てるための土地も必要になって土地の需要が上がり値段が上昇します。

 また、景気が良くなり収入が増えれば、株などお金を増やせそうなものに投資する人が増えます。土地の値段が上昇しそうなエリアで投資対象の物件の売買が活発化し土地の値段が上がります。特に皆の期待が集まる開発エリアやオフィス街などから土地の値段が上がっていきます。今期待の高まっている地域といえば、2020年の東京オリンピック関連エリアや、2027年開業予定のリニア中央新幹線の始発駅となる品川駅周辺などがあります。

土地の値段が上がる流れ

(6)土地価格の変動が暮らしに与える影響

 土地の値段は私たちの生活に大きく関係しています。(3)項で述べたように、固定資産税や相続財産のうちの不動産の評価額は公示価格が基準になって算出されます。その為、地価が上昇している時は税負担増加の可能性があり、何らかの対策が必要になるかもしれません。また会社の場合、企業経営者が土地を担保に運転資金の借り入れをしているケースでは、土地の価格の変動が金融機関からの信用力に影響を及ぼすこともあり得ます。


相続税対策