譲渡所得とは、土地や建物などの資産を譲渡した際に発生する所得です。本記事では、譲渡所得の基礎知識から、不動産売却による譲渡所得の税額や計算方法までわかりやすく解説します。税負担を軽減できる特例や、確定申告の進め方についても紹介していますので、不動産売却を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
【基礎知識】譲渡所得とは
譲渡所得=土地や建物、株式などの資産を譲渡した際に発生した所得
譲渡所得とは、個人が所有する土地や建物、株式などの資産を譲渡した際に得た利益を指します。具体的には、売却価額から取得費や譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額を差し引いた後の金額が課税対象です。
なお、譲渡所得における「譲渡」は、単なる売買のみを指すわけではありません。交換や法人への現物出資なども「譲渡」に含まれます。競売などは条件によって非課税扱いとなる場合があるため、税務署や専門家への確認が必要です。
そのため、資産を手放して利益が発生した際は、税金の計算が必要になると認識しておきましょう。
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
参考:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
譲渡所得の対象となる資産
| 譲渡所得の対象となる資産 | 対象外となる資産 |
|---|---|
|
土地、借地権、建物、株式等、金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、取引慣行のある借家権、配偶者居住権、配偶者敷地利用権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、土石(砂)など |
生活用動産(家具や衣服など)、強制換価手続によって資産が競売などをされたことによる所得、財産を相続税の物納に充てた場合の所得 など |
参考:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
譲渡所得の対象となる資産は、土地や建物といった不動産から、株式、宝石や骨とう品、ゴルフ会員権といった各種権利まで多岐にわたります。対象の資産を譲渡して売却益が発生した場合は、原則として課税対象です。
課税対象の資産を正確に把握しておくことで、売却計画を円滑に進められるだけでなく、申告漏れなどのトラブル防止にもつながります。資産を譲渡する際は、自身の売却資産が課税対象か事前に確認しましょう。
不動産売却による譲渡所得の分類
不動産売却で発生した譲渡所得は、他の所得と分けて計算される仕組みです。また、税率は所有期間に応じて「短期」と「長期」に分類され、それぞれの区分により税率が異なります。ここでは、不動産売却に関わる申告分離課税や、所有期間による税率の違いについて解説します。
申告分離課税と総合課税
| 課税方法の種類 | 対象となる資産の種類 |
|---|---|
| 申告分離課税 | 土地、建物、借地権、株式等 など |
| 総合課税 | その他の資産(ゴルフ会員権、金地金、機械器具)など |
参考:国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」
譲渡所得の課税方法は2種類あります。このうち、土地や建物など不動産の売却によって得た利益は「申告分離課税」に分類されます。申告分離課税とは、給与所得など他の所得と区別して税金を計算する方法です。
対して、ゴルフ会員権などの売却益は「総合課税」として、他の所得と合算して計算されます。これら2つの課税方式の違いを、正しく理解しておきましょう。
短期譲渡所得と長期譲渡所得
| 課税方法の種類 | 所有期間の判定基準 (申告分離課税の場合) |
税率 |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合 | 39.63% |
| 長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超の場合 | 20.315% |
※税率は、所得税・住民税・復興特別所得税の合計
※平成25年〜令和19年の期間は、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税とあわせて申告・納付する
参考:国税庁「長期譲渡所得の計算」
参考:国税庁「短期譲渡所得の計算」
不動産の譲渡所得税率は、土地や建物の所有期間に応じて「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2つに分類されます。所有期間が長いほど税負担が軽減される仕組みです。
短期譲渡所得と長期譲渡所得は、売却した年の1月1日時点における所有期間が5年を超えるかで判定されます。税金対策として、売却前に所有期間を必ず確認しておきましょう。
不動産売却による課税譲渡所得金額と税額の計算方法
土地や建物といった不動産を売却して利益が出た場合、まずは課税対象となる「課税譲渡所得金額」を求める必要があります。この金額を算出した後、所有期間に応じた税率を乗じることで、実際の税額を計算できます。
課税譲渡所得金額の計算方法
課税譲渡所得金額=収入金額 -(不動産の取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
課税譲渡所得金額は、不動産の売却で得た収入金額から、その不動産の取得費や譲渡費用を差し引き、さらに特別控除額を引いて算出します。詳細な税額を確認するためには、「取得費」「譲渡費用」「特別控除額」の内容をそれぞれ正確に把握することが必要です。
・収入金額・取得費・譲渡費用・特別控除額の範囲
| 項目 | 具体的な範囲の例 |
|---|---|
| 収入金額 | 不動産の売却代金、固定資産税の生産金 など |
| 取得費 | 購入代金(建物は減価償却費相当額を控除した額)、購入手数料、登録免許税、印紙税 など |
| 譲渡費用 | 売却の仲介手数料、印紙税、建物解体費、借家人への立退料 など |
| 特別控除額 | 3,000万円特別控除(マイホーム)など各種特例 |
参考:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
参考:国税庁「No.3252 取得費となるもの」
参考:国税庁「No.3255 譲渡費用となるもの」
収入金額には、不動産の売却代金や固定資産税の精算金など受取額の全体が含まれます。取得費には、不動産購入時の代金や登録免許税など、譲渡費用には不動産売却時の仲介手数料や印紙税などが該当します。
また、特別控除額はマイホームを売却した際に活用できる3,000万円の特例などが対象です。それぞれの項目について、何が含まれるのかを正しく把握し、計上漏れがないよう注意しましょう。
譲渡所得税額の計算方法
| 課税方法の種類 | 計算式 |
|---|---|
| 短期譲渡所得の場合 | 課税譲渡所得金額 × 39.63% |
| 長期譲渡所得の場合 | 課税譲渡所得金額 × 20.315% |
※税率は所得税・住民税・復興特別所得税の合計
※平成25年〜令和19年の期間は、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税とあわせて申告・納付する
参考:国税庁「短期譲渡所得の税額の計算」
参考:国税庁「長期譲渡所得の税額の計算」
算出された課税譲渡所得金額に、所定の税率をかけて実際の税額を求めます。所得税率は5年以下の短期譲渡で30%、5年超の長期譲渡で15%です。所得税に住民税と復興特別所得税を加えたものが、上記の総税率です。
不動産売却による譲渡所得の控除・特例の種類
不動産売却時には、売却理由や対象資産に応じて税負担を軽減できる複数の特例や控除を利用できます。これらを活用することで、譲渡所得に対する課税を抑えられる可能性があります。手取り額で損をしないためにも、自身の状況に適用できる制度があるか事前に確認しておくと安心です。
マイホームの売却に関連する特例
| 名称 | 内容・要件 |
|---|---|
| マイホームを売ったときの特例 |
【内容】 マイホームを売却した際、所有期間に関わらず、譲渡所得(売却益)から最高3,000万円まで控除できる制度 |
|
【要件】 ・自分が現に住んでいる家屋、または住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること など |
|
| 軽減税率の特例 |
【内容】 所有期間10年超えのマイホームを売却した場合に、通常の長期譲渡所得の税率(20.315%)よりも低い税率(6,000万円以下の部分は14.21%)が適用される制度 3,000万円の特別控除と併用可
|
|
【要件】 ・売却した年の1月1日時点で、家屋および敷地の所有期間がともに10年を超えていること など |
|
| マイホームの買換えの特例 |
【内容】 特定のマイホームを売却して新しい新居に買い換えた場合、一定の要件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられる制度(譲渡益が非課税になる制度ではなく、売却価額と買換資産の取得価額の関係によっては、その年に課税が生じる場合がある) |
|
【要件】 ・売却した年の1月1日時点で所有期間が10年超、居住期間が10年以上であること など |
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
マイホームを売却する際は、譲渡益から最大3,000万円を差し引く特例を適用できる場合があります。適用要件を満たし、譲渡益が控除額を下回れば、所得税や住民税はかかりません。この特例はマイホームの売却に適用できますが、親族への売却などは対象外となるため注意しましょう。
他にも、10年を超えて所有していた場合に適用される軽減税率の特例や、マイホームの買換え時に課税を繰り延べる特例などもあります。マイホームを売却する方は、利用できる特例の種類とその要件について事前に確認しましょう。
譲渡損失の損益通算
マイホーム売却で損失が出た場合、一定の要件を満たせば、他の所得と相殺する「損益通算」が可能です。損益通算を行っても控除しきれない損失は、翌年以降3年間にわたり繰越控除できます。
ただし、所有期間が5年を超えるマイホームであり、買換えや住宅ローン残高等の要件を満たす必要がある点に注意しましょう。なお、これらの特例を適用するためには、必要書類を添付して確定申告を行う必要があります。
参考:国税庁「No.3203 不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合」
参考:国税庁「No.2250 損益通算」
参考:国税庁「住宅:居住用財産の譲渡に関する特例措置」
その他の特別控除
| 特別控除の種類 | 控除額 |
|---|---|
| 公共事業等を目的に土地・建物を売却した場合 | 5,000万円 |
| 被相続人の居住用財産を売却した場合 | 3,000万円 |
| 特定土地区画整理事業等を目的に土地を売却した場合 | 2,000万円 |
| 特定住宅地造成事業等を目的に土地を売却した場合 | 1,500万円 |
| 農地保有合理化等を目的に土地を売却した場合 | 800万円 |
| 低未利用土地等を売却した場合 | 100万円 |
参考:国税庁「No.3223 譲渡所得の特別控除の種類」
マイホームに関する特例の他にも、売却事情や条件に応じた多様な特別控除が存在します。公共事業での収用時に適用される5,000万円控除や、区画整理の2,000万円控除などが代表例です。
それぞれの控除額の範囲内で譲渡益を差し引くことで、課税を軽減、あるいはゼロにすることもできます。各控除には適用順序や要件があり、年間の最大控除額は合計5,000万円までです。どの控除が適用可能か、国税庁の規定を踏まえて確認しましょう。
不動産売却における確定申告の必要性と進め方
不動産を売却して譲渡所得が発生した際は、原則として確定申告が必要です。確定申告を行う際は、特例の適用要件や必要書類を事前に整理し、期限内に正しく手続きしましょう。
確定申告が必要なケース・不要なケース
| 確定申告が必要なケース | 確定申告が不要なケース |
|---|---|
|
・不動産を売却して譲渡所得が発生した場合 ・特例を利用する場合 |
・不動産を売却しても譲渡所得が発生しない場合 |
不動産売却によって利益が出た場合は、原則として確定申告をしなければなりません。売却による利益は課税対象となるためです。そのため、適用によって利益がゼロになるケースでも、控除を受けるために確定申告をしなければなりません。
一方で、利益がマイナスで特例も使わない場合、確定申告は不要です。売却益がない場合でも、給与所得や副収入など別の理由で申告義務がないか、あわせて確認しましょう。
確定申告の基本手順
- 必要書類を準備する
- 自分が利用できる特例を確認する
- 譲渡所得税を計算する
- 確定申告書類に記入する
- 期限内に確定申告書を提出する
確定申告は、譲渡所得の計算から書類作成、提出、納税の手順で進めます。取得費の有無を確認し、不明な場合は売却価額の5%を概算取得費として計算します。
内訳書と分離課税用申告書(第三表)を作成し、e-Taxなどを利用して期限内に提出しましょう。申告期間は、原則として売却翌年の2月16日から3月15日までであるため、厳守してください。
参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
【確定申告に必要な書類】
| 必要書類 | 役割 | 入手先 |
|---|---|---|
| 確定申告書(第一表・第二表・第三表) |
申告書のメイン書類 不動産は「第三表(分離課税用)」が必須 |
税務署や申告会場、または国税庁のホームページ |
| 譲渡所得の内訳書 | 売却価格や取得費の内訳を詳しく記載する書類 | 税務署や申告会場、または国税庁のホームページ |
| 不動産を購入・売却したときの売買契約書のコピー | 「いくらで買ったか」「いくらで売ったか」の証明になる書類 | 手元(購入時・売却時のもの両方) |
| 不動産の取得費用がわかる書類 | 取得にかかった経費を証明する書類 | 手元(不動産会社や郵便局など) |
| 不動産の譲渡費用がわかる書類 | 売却にかかった経費を証明する書類 | 手元(不動産会社や郵便局など) |
| 本人確認書類 | 申告者本人を確認する書類 | 手元(未取得の場合は市区町村窓口などで手続き)例:マイナンバーカード |
| 登記事項証明書※ | 譲渡所得の特例適用時などに、所有関係等の確認資料として求められることがある書類 | 法務局(窓口・郵送・オンライン) |
※不動産番号等の明細書の提出などにより、添付を省略できる場合があります。
参考:国税庁「【確定申告書等作成コーナー】登記事項証明書の添付省略について」
不動産売却で譲渡所得が発生した際の手続きで失敗しないために
- 売却する不動産の所有期間を事前に把握する
- 確定申告の申告期限を把握する
- 不動産売却の専門家に相談をする
不動産売却を成功させるためには、事前の準備と正確な情報把握が欠かせません。まず、売却する不動産の所有期間を確認しましょう。事前に把握しておくことで、必要な税額の目安を簡単に算出できます。
加えて、確定申告の申告期限を必ず守りましょう。期限を過ぎてしまうと、延滞税などが追加で発生するケースもあるため注意が必要です。
不動産売却の手続きに不安がある場合は、売却を検討する段階で専門家に相談しましょう。住建ハウジングでは、不動産売却に関する豊富な知識と実績で、お客様一人ひとりに合わせた丁寧なサポートを行います。売却に関する不安がある方は、お気軽にご相談ください。
譲渡所得や確定申告に関するよくある質問
不動産売却に伴う譲渡所得や確定申告については、特例の活用や手続きの要否などで疑問が生じる場合があります。ここでは、とくに多く寄せられる質問と回答をまとめました。
Q. 譲渡所得はいくらまでであれば非課税?
A. 適用できる特別控除があり、譲渡所得がその控除額の範囲内に収まる場合は、譲渡所得に対する税金が生じないことがあります。
たとえば、マイホーム売却時の特別控除を活用した場合、最大3,000万円まで実質的に非課税です。譲渡所得から控除額を差し引いた結果がゼロになれば、原則として税金は発生しません。特例の適用要件に合致しているかを確認し、各種控除を活用して税負担を軽減しましょう。
ただし、特例の適用を受けるためには確定申告が必要です。必ず期限内に申告を行いましょう。
Q. 不動産売却で発生した譲渡所得について、確定申告をしないとどうなる?
A. 本来利用できたはずの控除が受けられず、税負担が高まるリスクがあります。
譲渡所得が発生しているのに確定申告をしないと、さまざまな不利益を被るおそれがあります。申告を怠ると、本来活用できたはずの特別控除が適用されません。
また、申告期限を過ぎたまま放置すると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるケースもあります。不要な税負担を避けるためにも、期限内の正しい申告が必須です。
Q. 相続した不動産で取得費がわからないときはどうする?
A. 売却価格の5%を概算取得費として計算しましょう。
相続した不動産などで取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計算できます。昔の物件などで購入当時の書類を紛失していても、この救済措置を活用すれば計算が可能です。
確定申告時には、譲渡所得の内訳書に概算取得費の計算内容を記載して申告しましょう。具体的な判断に迷う場合は、事前に税務署や専門家へ相談するのがおすすめです。
参考:国税庁「No.3258 取得費が分からないとき」
Q. 3,000万円特別控除を使えば住民税もかからない?
A. 課税譲渡所得がゼロになれば、住民税もかかりません。
住民税は所得税の課税所得をベースに計算されるため、特別控除の適用で譲渡所得がゼロになれば原則として発生しません。
ただし、給与所得や事業所得など他の所得がある場合は、その所得に応じた住民税が別途加算されます。
不動産売却で譲渡所得が発生したら、期限内に正しい申告を
譲渡所得とは、土地・建物・株式など対象となる資産を譲渡した際に得た利益です。不動産売却で利益が出た場合、所有期間や利用できる特例などを正しく把握し、適切に確定申告を行って納税する必要があります。売却計画の段階から税負担を正しく把握し、余裕を持って準備を進めましょう。
東京都の不動産購入・売却・売買の相談に関しては、住建ハウジングを利用するのがおすすめです。住建ハウジングでは、豊富な経験と実績を活かし、お客様一人ひとりのニーズに合わせた丁寧なサポートを提供しています。お問い合わせや詳細については、下記のリンク先から公式ホームページをご確認ください。不動産売却に関するさまざまな情報発信も行っています。
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