ここまでできる!待機児童対策(1)

共働き世帯が増え、都市部を中心に深刻化している待機児童問題。
小さい子供がいる家庭にとっては、仕事の復帰や家計にも影響するだけに、心配事のひとつではないでしょうか。
国や自治体が改善策を講じているにもかかわらず、解消される気配のない一方で、「待機児童数減少」「待機児童ゼロ」などの話題も度々持ち上がり、振り回されてしまう人も少なくないようです。
そこで、まずは待機児童に該当するのはどのようなケースなのかを明らかにし、東京都を例にとって、保育園への切符を手にするための対策について紹介していきたいと思います。

待機児童に認定されるケースは意外と少ない?

国の基準を満たす「認可保育所」への入所を希望する0歳から小学校入学前までの児童は、居住地の市区町村役場を通じて入所の申込みを行います。
このとき、応募者数が保育所の定員を上回ると、入所できない児童が出てきます。
本来、その児童すべてが「待機児童」となるはずですが、定義にはいくつかの要件があり、認可保育所へ入所できなかった児童で、尚且つ次に該当する場合を待機児童としてカウントしています。

・保育所以外の適切な保育を行っている施設などで、保育を受けていない
・産休、育休明けの入所希望としての事前申込みではない
・入園可能な保育所があるのにほかの保育所を希望しているなど、保護者の私的な理由による待機ではない

つまり、「認可保育所に入所できなかったために認可外保育施設などを利用している」場合や、「子供の預け先がなく育休を延長して認可保育所の入所待ちをしている」ケースであっても、国がいう待機児童には含まれません。

ただ、これらを含めた待機児童の定義は各自治体に委ねられているため、待機児童数の実態はつかみにくいのが現状です。
例えば、保護者が求職中である場合は、多くの自治体は「求職活動の状況把握に努め適切に対応する」としていますので、待機児童数から除外しています。

待機児童ゼロだからといって、必ず入所できるわけではない

これらの条件を踏まえた上で、東京都の各自治体が公表している待機児童数を見ていくと、次のようになっています(数字はいずれも2016年7月19日・東京都福祉保健局発表)。

東京23区の待機児童数ワースト3 順位 区 人数
1位 世田谷区 1,198人
2位 江戸川区 397人
3位 板橋区 376人

東京23区の待機児童数ベスト3 順位 区 人数
1位 千代田区 0人
2位 新宿区 58人
3位 港区 64人

東京都が公表した2016年の東京都の待機児童数は8,466人のため、1位の世田谷区は全体の約14%を占めることになります。数字だけ見れば、全国でもトップの人数です。
なお、世田谷区は保護者が育休中や休職中の児童も待機児童数に含めて算出しているため、これらを除いてカウントした場合、待機児童数は400人ほどに下がるといわれています。
一方、待機児童0人の千代田区では、認可外保育施設などの利用で対応しているため、認可保育所へ入れなかった児童は3人に1人に上るとの試算もあります。
また、世田谷区の就学前児童数が約44,000人なのに対し千代田区は3,200人足らずと、分母になる児童数の違いも大きく影響しています。
ちなみに、23区外の東京の市町村でも待機児童数は多く、府中市の296人を筆頭に、調布市の289人や三鷹市の264人など、東京都心への通勤に便利なエリアで問題が顕在化しています。

自治体の待機児童対策はどこに着目して見れば良い?

このように、「待機児童数」だけで一概に認可保育所の入りやすさを計ることはできません。
では、どのように対策を打てばいいのでしょうか?

まず着目したいのが「入園決定率」です。
これは、「新規で保育所へ入所した児童数」を「新規で入所申請した児童数」で割ったもので、実際にどのくらいの割合で認可保育所へ入所できたのかがわかります。
激戦区とされる世田谷区は60%未満ですが、待機児童が少ないはずの港区は50%未満となっており、実際は港区のほうが保育所に入りにくいわけです。

次に、「区独自で行っている待機児童対策」を見てみましょう。
どのエリアであっても、入園決定率が100%でない限り入所できない可能性があります。
それでも、区が行っているサービスが充実していれば、何かのときにも安心して子育てをすることができるでしょう。
例えば世田谷区の場合、子育て支援ヘルパーの派遣を無料で行っているほか、1歳以上の未就学児(一部0歳児~)を時間単位で預かってくれる「ほっとステイ」や、登録者同士で支え合う「ファミリー・サポート・センター事業」など、児童をケアする制度が豊富に用意されています。
また、杉並区は一時保育などの子育て支援サービスで利用できる「子育て応援券」を配布、品川区では子育てを応援する「しながわパパママ応援アプリ」によるサポートを導入しています。

ほかにも、区内における待機児童の偏りを調整するための「送迎保育ステーション」の充実や、保育所数を増やすための取組みなどを積極的に行っている区もありますので、今後の見通しも含めて参考にすると良いでしょう。

待機児童問題は、共働き世帯にとってはまさに死活問題です。
しかし、子育てに必要なことは「認可保育園に入れること」だけではありません。
「子育てに適した環境が整っていること」「経済的に無理がないこと」など、あらゆる視点で生活を見つめ、自分たちに合うエリアを探すことが大切です。