老後の生活。セカンドライフのための物件選び

国民生活センターの調査によると、65歳以上の高齢者の事故発生場所に占める住宅の割合は約77.1%にも上ります。
住み心地がよく安全な家は、老後の快適な生活にとって欠かせないものになります。
足腰が弱くなったり車椅子を使うようになったりしたときに備えて、早めにバリアフリーへと改築・新設しておくのはとてもよいことですが、将来のことを見通して過不足のないリフォームを施すことはなかなか簡単ではありません。
今回は高齢者が注意したい家の間取りについて、2世帯住宅のことにも触れながら紹介します。

早期の住宅バリアフリー化は後から修正できないものに絞って行う

住宅のバリアフリー化というと、段差をなくすとか車椅子が通れるスロープを設置するなどが思い浮かびますが、大きな定義では「障害物がない家」にすることです。
足が上げづらくなったり車椅子を使うようになったりしても、居住者が自由かつ安全に動ける状態を作ることを意味します。

しかし、将来自分の体がどんなふうになるのかは工事の段階では予想することができません。
最初から完璧をめざそうとすると、足腰が弱ったときにつかまりやすいようにと設置した手すりが車椅子での移動の邪魔になってしまったり、手すりの位置が合わなかったりということが起こってしまいます。
早期に行う住宅のバリアフリー化の目的は完璧なものを作ることではなく、いざというときすぐに対応できるベースを作っておくことです。
具体的には以下に挙げるような、後からでは修正が難しいものと必ず必要になるものに絞ってから進めることがポイントになります。

●段差をなくす

家の中の段差があると転倒事故のリスクが増し、また車椅子の動きも著しく制限されてしまいます。段差をなくしてフラットな床にしておきましょう。

●廊下や階段は十分な幅を確保する

あまり狭いと車椅子が通れませんし、手すりをつけたときに使いづらくなってしまうこともあります。
手すりの幅分を除いて最低でも780mm以上は確保しておくのがおすすめです(※通常サイズの介助用車椅子の場合)。

●手すりの下地材は広範囲に入れる

壁に手すりを取り付けるには下地材が入っている必要があります。
後から手すりが必要になったときにつける位置が限定されてしまわないように、広範囲に下地材を入れておけば安心です。

●トイレ・浴室など水周りは寝室の近くに配置する

歳を重ねるとどうしてもトイレが近くなったり、足腰が弱って歩きづらくなったりします。
そんなときにトイレと寝室が離れていたら一苦労です。水周りは毎日、トイレは1日に何回も使うものなので、使いやすい動線で寝室の近くに配置しておくのが大切です。

●扉を引き戸にする

歳とともに握力も弱くなるのでドアノブでは開けづらさを感じることがあります。
また、前後に開くドアは車椅子には向きません。引き戸なら軽い力で開けられ通りやすいのでおすすめです。
また、間口は十分な幅を取ることを忘れずにおきましょう。

バリアフリーの2世帯住宅は間取りが最も重要

住宅のバリアフリーをどこまで、どのように行うのかは、将来的な介護を見据えた2世帯住宅を立てる際にも非常に重要なポイントになってきます。

2世帯住宅のバリアフリー化を考えるにはまず間取りについて考えなければなりませんが、ここで何より重要なのはお互いのプライバシーをしっかり確保することです。
親子とはいっても親と子のそれぞれに生活のペースがあります。
過度な干渉はトラブルのもとなので、それぞれの世帯の生活空間を完全に分けてしまうのがおすすめしたい方法です。

その際にはお互いの居住区内を動く動線が交わらないように配慮し、可能であればキッチンや水周りはもちろん、玄関も世帯ごとに設けるようにするとよいでしょう。
内部に連絡通路を作っておけば必要なときは行き来が可能です。
その一方で、すべての設備を独立した形式にしても夕食を一緒にとったりすることはできます。
独立形式で作った設備を共同で利用することは簡単ですが、その逆はできないので、最初から独立形式で作っておくのが一番よい方法です。

多くの場合、1階に親世帯、2階に子ども世帯という構造になる2世帯住宅ですが、間取りが決まれば何をどれだけバリアフリー化するのかは、通常の住宅のバリアフリー化と大きな違いはありません。
各世帯の生活空間が分かれていれば親世帯の部分だけをバリアフリー化すればいいので、工事の範囲も明確になり、また手すりの設置により廊下の幅が狭くなってしまい子ども世帯が暮らしにくさを感じる、というようなこともなくなります。

介護を見越した2世帯住宅ではバリアフリー化を問題にする前に、お互いが思い描く生活についてよく話し合い、間取りや守るべきルールを決めた上で気持ちよく過ごせる空間を作ることがなにより大切になます。

まずは交通整理から

住宅のバリアフリー化は何が必要になるかはっきり分からない段階で行うことが多いので、最初から必要になるすべての設備を完璧に用意することはできません。
ついあれもこれもと詰め込みがちになりますが、部屋の間取りや廊下・階段の幅など「後から修正できないもの」に焦点をあてて分類すれば、何をどこまで行えばよいのかを整理することができます。
これから2世帯住宅を建てようとしている方、住宅設備を新調しようとしている方は参考にしてみてください。