新宿の再開発に終わりなし、周辺区との一体化も視野に

新宿区都市計画部地域整備課が発行した「まちづくり 昨日・今日・明日 新宿区の市街地再開発事業(平成26年度版)によると、新宿区の再開発計画は昭和末期から現在に至るまで18の計画が実施され、このうち14地区が完了。
残り4地区(北新宿地区・西富久地区・西新宿五丁目中央北地区・四ツ谷駅前地区)が事業中です。
この4地区の開発面積は11.2ヘクタールにのぼります。

このほか西新宿六丁目西部地区計画・西新宿六丁目東部地区計画・北新宿地区計画・西新宿八丁目成子地区計画などが進められています。

新宿エリアは東京都庁が所在する副都心として拡大・成長を続けており、常にエリア内のどこかで複数の再開発が行われています。
このエリアに限っては「再開発が一段落する」ということは考えられないのかもしれません。
また最近では市街地が東西南北に拡大し、新宿区全体が1つの都市空間になりつつある点や、渋谷区中野区の市街地との連結など区域を超えての開発も進んでいます。

今後の再開発計画は?

・老朽化した高層建築物や道路などの都市インフラの近代化
・エリア内の「老朽木造建物が多い、細分化された宅地」を刷新し、防災能力が高く居住環境にすぐれた住宅地にすることで不動産を高度活用する

という2つの方向性で進められる模様です。
今回は現在~近い将来に予定されている主な再開発計画のうち、新宿駅周辺と四ツ谷駅周辺にスポットをあててみましょう。

新宿エリアの再開発

【新宿駅周辺】

新宿駅では新宿駅の東西を結ぶ自由通路と交通結節点を建設中です。
完成予定は2016年春となっており、隣接する南口駅舎跡地(住所上は渋谷区)には地上33階建て、高さ168メートルの「新宿駅新南口開発ビル(仮称)」も建設中です。
新宿駅新南口開発ビルの1~5階にはルミネが入居し、6階から上は賃貸オフィスとなる予定です。

交通結節点は線路の上空につくられる約1.47ヘクタールの人工地盤となっており、鉄道・自家用車・高速バス・タクシーなどの交通機関がスムーズに連絡できるような施設となる予定です。

新宿駅の西口周辺には小田急百貨店、新宿ミロード、小田急ハルク、新宿スバルビル、小田急エース(地下街)など小田急グループが運営する大規模商業施設が集中しています。

小田急グループが2015年に発表した「グループ中期経営計画(2015~2017年度)」には、「国内最大のターミナルである新宿駅周辺においてグループ収益の最大化を図るため、新宿西口再開発計画を検討、推進します。
また、乗降者数が多く将来における駅周辺の大規模再開発の実施可能性が高い沿線中核駅についても再開発計画を検討、推進します」という一文が盛り込まれています。

具体的な再開発計画はまだ発表されていませんが、新宿西口広場を中心とした大規模な「小田急主導の新しいまちづくり」が行われることはほぼ間違いなさそうです。

【四ツ谷駅周辺】

JR四ツ谷駅の北東側では、財務省公務員宿舎や旧四谷第三小学校の跡地などを利用して150メートル級の超高層ビルを建設し、これをランドマークとして、18000平米の敷地にオフィス・住宅・教育・商業・サービス・文化国際交流・スポーツなどの施設を集中させる計画が進められています。
竣工予定は平成29年度となっており、四ツ谷駅周辺の景観や人の流れを一変させる可能性を秘めています。

再開発でどんなメリットがあるのか?

近年、東京23区内では多くの大規模再開発計画が同時並行で進められています。
特に虎ノ門や品川エリア周辺が注目を集め、このため西新宿周辺の再開発にメドがたった新宿エリアは少しおとなしくなった印象を受けます。

しかし新宿駅周辺の再開発によって都心西部の人の流れが変わり、四谷が新たな中核都市へと変貌することで新宿エリアのブランド力は再び力強く上昇するものと思われます。

不動産投資家の立場から見れば、西新宿周辺にまだ残る老朽住宅が集中する地区や新宿エリアの中ではこれまで比較的目立たない印象のあった四ツ谷駅周辺には大きなチャンスがあるといえそうです。

新宿エリアには、いろいろな意味で国民の注目を集めるメインスタジアムが国立競技場跡に建設されることになっています。
しかし、オリンピック前後の投機的な不動産売買の流れとは別に、オリンピック以降も値下がりしにくそうな堅実な資産価値を持つ不動産を探すためには、副都心・新宿の地力に着目し、新宿の再開発計画にも目を向けてみましょう。