住宅地の地価が安定している複数路線、乗り入れ駅周辺

複数路線乗り入れ駅には、例えば新宿駅や渋谷駅、池袋駅のように多くの路線が乗り入れるターミナル駅だけでなく、吉祥寺駅のようにJR中央線京王井の頭線の両線が利用できる駅も含まれます。
中目黒駅(東急東横線東京メトロ日比谷線)などもそうですし、自由が丘駅のように同じ東急の東横線大井町線が利用できる駅も複数路線乗り入れ駅といえるでしょう。

東京都心では近年には異なる鉄道会社同士の直通運転も盛んに行われており、事実上複数路線が利用できる駅も増加しています。
また駅舎は異なっているが、違う鉄道会社の駅舎が隣接しているような駅も、地域住民にとっては複数路線乗り入れ駅とほとんど同じようなメリットがあるでしょう。

複数路線乗り入れ駅の魅力とメリット

複数路線乗り入れ駅のメリットは、およそ以下のように分類できます。

【ターミナル駅の場合】
・複数路線が利用できるため、通勤・通学以外にもさまざまな場所への移動が便利
・乗り換えで駅を利用する人が多く、駅ナカ施設が充実している場合が多い
・その駅始発の電車があり、混雑を避けて座れる可能性が高い
・ターミナル駅周辺は繁華街や商業が発達している地域が多いためショッピング・飲食などに便利
・場合によっては1つの目的地に対して複数の路線があり、1つの路線でトラブルが発生した場合でも通勤・通学に影響が少ない

【ターミナル駅以外の場合】
・複数の路線が利用できるため、複数のターミナル駅(例えば京王線明大前駅などの場合では新宿駅と渋谷駅)へのアクセスに便利
・ターミナル駅ほど周辺の地価が高くなく、駅近くに住宅地が広がっているケースが多い
・駅周辺の雑踏がターミナル駅ほど激しくない(生活環境がいい)
・1つの路線でトラブルが発生した場合でも、迂回ルートで目的地に移動できる

もちろん、これらはすべての駅にあてはまるものではなく、全体的な傾向としての話です。
しかし、不動産投資という視点でみるならば、それぞれに異なる魅力が感じられます。

まず、ターミナル駅周辺の地価は比較的高く、また土地に余裕がありません。
このため再開発のチャンスを狙うか中古物件が出るのを待って探すということになるでしょう。
ただし商業施設としての不動産物件を検討するのであれば人通りの多いターミナル駅周辺のほうが有利ということになります。

複数路線乗り入れ駅における不動産地価の推移

複数路線乗り入れ駅周辺の不動産の特徴として、「住宅地の地価が非常に変動しにくい」という点があげられます。
一般に住宅地の地価は商業地などに比べて安定性が高いのですが、特に複数路線乗り入れ駅周辺ではそれが顕著です。
これは複数路線が利用できるという利便性に高い普遍性があり、エリアブランドが上下動しにくいためと思われます。

一例としてJR新駅が隣にできることとリニア中央新幹線の駅ができることなどが決定して大きな注目を集めた品川駅と、長年若者を中心に「住みたい街」ランキングの上位に常に位置し、近年はエリアブランドに大きな変化がみられない下北沢駅とを比較してみましょう。

この2つの駅周辺は規模においても乗り入れ線の数においても対照的なエリアですが、この10年間でそれぞれの駅周辺の地価はどのように変動したのでしょうか。

国土交通省の国土交通省地価公示・都道府県地価調査によれば、品川駅周辺(港区高輪三丁目)の平成18年の都道府県地価調査による住宅地の価格は100万円/平米。
これに対し平成27年の同地区の価格は104万円/平米。この10年間であまり大きな変動はなかったことがわかります。

下北沢駅周辺の公示価格は、小田急不動産の発表によれば2015年現在の公示地価で坪単価が174万円。
これは平成18年以降ほとんど変化していません。

もちろん、地価の変動要素は最寄り駅の路線だけに左右されるものではありませんが、これだけ性格・条件の異なる駅であっても双方ともに周辺地価に大きな変動がないことから、複数路線乗り入れ駅が地価の長期安定化に影響を与えていることは確かなようです。

不動産投資に「資産価値の長期的安定」を求めたい場合、複数路線乗り入れ駅周辺の物件に目を向けてみる価値は十分にあるのではないでしょうか。